決算賞与の記事で、賞与にも社会保険料がかかると書きました。そこは1行で終わらせていました。
⚠️ 調べたら、賞与の社会保険料には上限があって、しかも月給とは別の上限でした。 そして支給の回数で扱いが変わるという、知らないと事故る線もありました。
まず、計算のしかた
日本年金機構の説明です。
賞与にかかる保険料は、実際に支払われた賞与額(税引き前の総支給額)から1,000円未満を切り捨てた額を「標準賞与額」とし、その「標準賞与額」に健康保険・厚生年金保険の保険料率をかけた額です。保険料は、事業主と被保険者が折半で負担します。
⚠️ 料率は月給と同じです。「賞与だから安い」ということはありません。
そして折半なので、賞与を出すと会社の負担も同じだけ増えます。 決算賞与を出す判断をするときは、支給額の外側にこの負担が乗ることを見ておく必要があります。
🚩 上限は2つあって、単位が違います
ここが本題です。
標準賞与額の上限は、健康保険では年度の累計額573万円(年度は毎年4月1日から翌年3月31日まで)、厚生年金保険は1カ月あたり150万円とされていますが、同月内に2回以上支給されるときは合算した額で上限額が適用されます
整理するとこうです。
| 上限 | 単位 | |
|---|---|---|
| 健康保険 | 573万円 | 年度の累計(4月1日〜翌年3月31日) |
| 厚生年金保険 | 150万円 | 1か月あたり(同月内は合算) |
⚠️ 単位が違うのが厄介です。 健康保険は1年分をためて573万円、厚生年金は1回(同月分)で150万円。
これが何を意味するか。
- 厚生年金は、1回の賞与が150万円を超えた部分には保険料がかからない
- ⚠️ **ただし「同月内に2回以上支給されるときは合算」**なので、同じ月に分けても意味がありません
- 健康保険は年度で573万円なので、年度をまたぐかどうかで変わります
⚠️ これを「上限を使って安くする」方向で考えるのは勧めません。 標準賞与額は年金額の計算にも使われるので、下がれば将来の年金も下がります。 給付基礎日額のときと同じで、保険料だけ見て動かすと、受け取る側が損をします。
知っておくべきなのは、「賞与を増やしても社会保険料が青天井には増えない」という事実のほうだと思います。
⚠️ 年4回以上出すと、賞与ではなくなります
これが一番の落とし穴でした。
「被保険者賞与支払届」の対象となる賞与は、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受けるもののうち、年3回以下の支給のものです。なお、年4回以上支給されるものは標準報酬月額の対象とされ…
⚠️ 年4回以上出すと、賞与ではなく「報酬」になります。 つまり標準報酬月額に入るということです。
そうなると、上の573万円・150万円という上限の話が当てはまらなくなり、4〜6月の平均で決まる仕組みのほうに乗ります。
名前は関係ありません。
いかなる名称であるかを問わず
(例)給与規程において7月、12月に「○○手当」の支給を規定している場合、支給月が年2回と明確に規定されているため、通常の報酬ではなく賞与となります
⚠️ 「手当」という名前でも、年2回と決まっていれば賞与です。逆に、賞与という名前でも年4回出せば報酬になります。判定するのは名前ではなく回数です。
⚠️ ここが決算賞与と繋がります。 通常の夏・冬の賞与に加えて決算賞与を出すと、年3回です。もう1回増やすと年4回で、扱いが変わります。
手続きは5日以内です
事業主が被保険者および70歳以上被用者へ賞与を支給した場合には、支給日より5日以内に「被保険者賞与支払届」により支給額等を届出します
⚠️ 5日以内です。賞与を出したら、すぐに届出が必要ということになります。
納付のしかたも書かれています。
賞与にかかる保険料は、毎月の保険料と合算されて賞与支払月の翌月の納入告知書で通知されます
⚠️ 翌月の請求が跳ね上がります。 納税資金を分けていないと書きましたが、社会保険料も同じで、賞与を出した翌月に資金が要ります。 支給額だけを見て決めると、翌月に足りなくなります。
なお、事業主は被保険者負担分を賞与から控除できます。
まとめて、どう考えるか
退職金とボーナスを比べたときに「税と社会保険料の面では退職金が有利」と書きました。その中身が、今回はっきりしました。
- 退職金には社会保険料がかかりません
- 賞与には、月給と同じ料率でかかります。労使折半です
- ⚠️ ただし賞与には上限がある(健保は年度573万円、厚年は月150万円)ので、額が大きくなるほど負担率は下がります
それでも、私は「その年の働きで配る」ほうを選んでいます。 ⚠️ 社会保険料の分だけ損をしているのは、分かったうえでです。
理由は前に書いたとおりで、勤続年数で配る仕組みより、その年の働きで配りたいからです。 税と社会保険料で有利なほうを選ぶ、という決め方をしていません。
私がやること
⚠️ 確認することが2つできました。
- 賞与の支給が年何回になっているか(決算賞与を足して年4回にならないか)
- 賞与を出した翌月の社会保険料の資金を見ておく
⚠️ 1番は、就業規則の話でもあります。 決算賞与の記事で「支給日在籍要件があると未払計上できない」と書きましたが、賞与は、税務と社会保険の両方から規程を見られるということでした。
まとめ
- 賞与の保険料は、1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」×保険料率。 料率は月給と同じで労使折半
- 🚩 上限は2つ。健康保険は年度累計573万円、厚生年金は1か月あたり150万円
- ⚠️ 同月内に2回以上支給するときは合算して上限が当たる
- 🚩 ⚠️ **年4回以上支給すると、賞与ではなく「報酬」**になり標準報酬月額に入る
- ⚠️ 判定は名前ではなく回数。 「手当」でも年2回なら賞与、「賞与」でも年4回なら報酬
- 届出は支給日から5日以内
- ⚠️ 保険料は翌月の納入告知書で毎月分と合算して来る。 賞与を出した翌月の資金を見ておく
- ⚠️ 標準賞与額は年金額の計算にも使われる。 保険料だけ見て下げると、受け取る側が損をする
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この記事について
本記事は執筆時点(2026年9月)に日本年金機構が公表している資料にもとづいて書いています。筆者は社会保険労務士ではありません。
⚠️ 標準賞与額の上限額、保険料率は改定されることがあります。 健康保険料率は都道府県や健康保険組合によって異なります。
賞与の支給回数の判定、規程の書き方、届出については、必ず管轄の年金事務所または社会保険労務士にご確認ください。 本記事は一般的な情報提供であり、個別の判断を示すものではありません。