退職金かボーナスかの記事で、こう書きました。
勤続年数で配る仕組みより、その年の働きで配るほうを選んでいる。
では、その「配る」を決算期末にやるとどうなるのか。 調べました。
⚠️ 払う前に損金にする方法がありました。そして、就業規則の書き方ひとつで使えなくなることも分かりました。
原則は「払った日」です
まず前提です。国税庁の説明では、賞与の損金算入時期は3つに分かれます。
そして原則はこれです。
上記1および2に掲げる賞与以外の賞与 → その支払をした日の属する事業年度
払った期の経費、ということです。決算日を過ぎてから払えば、来期の経費になります。
利益が出た年に報いたいのに、経費になるのは翌期——これでは噛み合いません。そこに例外があります。
未払いのままでも、当期の損金にできます
3つの要件を全部満たせば、まだ払っていなくても当期の損金にできます。原文はこうです。
(1) その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知をしていること。
(2) (1)の通知をした金額を通知したすべての使用人に対しその通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていること。
(3) その支給額につき(1)の通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること。
整理するとこうです。
| 要件 | いつまでに | |
|---|---|---|
| ① 通知 | 各人別に、全員に、支給額を通知する | 決算日まで |
| ② 支払 | 通知どおりの金額を、通知した全員に払う | 決算日の翌日から1か月以内 |
| ③ 経理 | その金額を当期の費用として計上する | 決算で |
②の期限は決算月で決まります。
| 決算月 | 支払期限 |
|---|---|
| 3月決算 | 4月30日 |
| 9月決算 | 10月31日 |
| 12月決算 | 1月31日 |
🚩 就業規則に1行あるだけで、使えなくなります
これが一番の落とし穴でした。 国税庁が(1)にわざわざ注記を付けています。
(注1) 法人が支給日に在職する使用人のみに賞与を支給することとしている場合のその支給額の通知は、ここでいう**「通知」には該当しません。**
⚠️ 「支給日に在籍している者に支給する」。この一文が就業規則や賞与規程にあると、未払計上はできません。
理由は考えれば分かります。 支給日に辞めていたら払わない、ということは、通知の時点で金額が確定していないからです。「払うかもしれない」は通知ではない、という理屈です。
⚠️ そして、この一文は多くの就業規則に入っています。 モデル就業規則にもよくある書き方です。節税のつもりで決算賞与を組んだのに、規程を読んだら使えなかった——これは十分あり得ます。
もうひとつ注記があります。
(注2) 法人が、その使用人に対する賞与の支給について、いわゆるパートタイマーまたは臨時雇い等の身分で雇用している者(雇用関係が継続的なものであって、他の使用人と同様に賞与の支給の対象としている者を除きます。)とその他の使用人を区分している場合には、その区分ごとに支給額の通知を行ったかどうかを判定することができます。
⚠️ 「全員に通知」の「全員」は、区分している場合は区分ごとに見られます。 ただし普段から賞与を出しているパートの方は「その他の使用人」に含まれると読めます。普段出している人を外すと、要件を落とします。
⚠️ 役員には使えません
念のため書いておきます。この仕組みは「使用人」の賞与の話です。
役員賞与は別の制度(事前確定届出給与)で、あらかじめ税務署に届け出た日に、届け出た金額を払う必要があります。⚠️ 決算の数字を見てから役員に賞与を出して損金にする、はできません。
なお、使用人兼務役員に支給する賞与のうち、使用人としての職務に対応する部分は、使用人賞与に含まれます。
実際にどう運用されているか
国税庁が文書回答事例を公表しています。3月決算の会社の例です。
- 1月中に取締役会で支給基準条件を設定(例:「当年度において粗利○○円以上を達成した場合」)
- 同時に従業員ごとの金額を決定し、書面で通知して確認・押印させる
- 4月に入って条件の達成を確認
- 4月末までに現金で支給
⚠️ **「押印させる」**まで書かれているのが実務的だと思いました。通知したことを、後から証明できる形にしておくということです。
口頭で伝えました、では通りません。
⚠️ 手取りの話も
⚠️ 賞与にも社会保険料と源泉所得税がかかります。
会社の負担は支給額だけではありません。 社会保険料の会社負担分が上に乗ります。そして受け取る側も、額面がそのまま手取りになるわけではありません。
退職金とボーナスを比べたときに書いたとおり、税と社会保険料の面では退職金のほうが有利です。それを分かったうえでボーナスを選ぶ、という話でした。決算賞与も同じ土俵です。
私がやること
「その年の働きで配る」と書きました。 決算賞与は、まさにその考え方の実装です。
⚠️ ですが、調べて分かったのは、方針を決めることと、それが税務上通ることは別だということでした。
就業規則の賞与の規定に「支給日に在籍する者」と書いてあれば、その時点で未払計上はできません。 方針が、規程の1行に負けます。
やることは決まりました。
- 賞与規程に「支給日在籍」の条件が入っているかを確認する
- 入っていて、決算賞与を使いたいなら、規程を見直すか、決算日までに払い切る
- やるなら決算期末ではなく、その前に決める(通知が決算日までに要るので、慌ててからでは間に合いません)
⚠️ 3番が本質だと思います。 決算の数字が固まってから考えるのでは遅い制度でした。
規程の書き方が損金算入の可否を決める、というのは自己判断が危ないところです。⚠️ 決算期末に慌てて相談するのでは間に合わないので、期の途中で一度当ててもらうのがいいと思います。顧問税理士がいない場合は、相談先を探せる場所があります。
まとめ
- 賞与は原則「払った日」の損金。 決算後に払えば翌期の経費になる
- 3要件を満たせば、未払いでも当期の損金にできる——各人別に全員へ通知/決算日の翌日から1か月以内に支払い/当期に損金経理
- 🚩 ⚠️ 「支給日に在職する使用人のみに支給する」としている場合、その通知は「通知」に該当しない——就業規則の1行で使えなくなる
- ⚠️ パート・臨時雇いを区分している場合は区分ごとに判定。 ただし普段から賞与を出している人は外せない
- ⚠️ 役員賞与には使えない(事前確定届出給与は事前の届出が必要)
- 通知は書面で、確認・押印まで(国税庁の文書回答事例の手順)
- ⚠️ 決算の数字が固まってから考えるのでは遅い
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この記事について
本記事は執筆時点(2026年8月)に国税庁が公表しているタックスアンサーNo.5350(令和7年4月1日現在法令等)および文書回答事例にもとづいて書いています。筆者は税理士でも社会保険労務士でもありません。
⚠️ 文書回答事例は、照会者が示した事実関係を前提とした個別の回答であり、事実関係が異なれば結論も変わります。就業規則や賞与規程の書き方、通知の方法、支給対象者の範囲によって、損金算入の可否は変わります。
実際に決算賞与を実施する際は、必ず顧問税理士にご相談ください。 また、賞与規程の変更には労働基準法上の手続きが必要な場合がありますので、社会保険労務士にもご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務・労務判断を示すものではありません。