決算賞与の記事を書いたあとで、繋がっていることに気づきました。
賞与を出すと給与等の支給額が増えます。そして、給与等の支給額が増えると、法人税が減ることがあります。
賃上げ促進税制です。⚠️ 調べたら、最大45%で、しかも5年繰り越せました。 ただし役員の分は入りません。
まず、いくら減るのか
国税庁の説明では、計算はこうです。
税額控除限度額 = 控除対象雇用者給与等支給増加額 × 15パーセント
「増えた額の15%」が、法人税から直接引かれます。
⚠️ 経費が増えて所得が減る、という話ではありません。 税額そのものから引くので、効き方が違います。
要件は「前年より1.5%増やす」
基本の要件は1つだけです。
(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)/ 比較雇用者給与等支給額 ≧ 1.5パーセント
比較雇用者給与等支給額とは、前事業年度の雇用者給与等支給額です。つまり前年より1.5%増やせば、基本の15%控除が使えます。
⚠️ 比較雇用者給与等支給額が0の場合は、要件を満たしません。 前期に給与がなければ使えない、ということです。
🚩 役員と、その親族は入りません
ここが一番の注意点だと思いました。
この制度の「雇用者」は国内雇用者という定義です。
国内雇用者とは、法人の使用人(その法人の役員と特殊の関係のある者等の一定の者を除きます)のうちその法人の国内に所在する事業所につき作成された賃金台帳に記載された者をいいます
⚠️ 役員本人はもちろん、役員と特殊の関係にある者(親族など)も除かれます。
中小企業では、これが効きます。 役員報酬を上げても対象外ですし、家族が従業員として働いている場合、その分は増加額に入りません。
「給与を増やしたのに要件を満たさない」ということが起こり得ます。 ⚠️ 誰の分が入るかを先に確認する必要があります。
上乗せで最大45%になります
基本の15%に、3つの上乗せがあります。
| 要件 | 上乗せ | |
|---|---|---|
| ① | 給与等支給額の増加率が 2.5%以上 | +15% |
| ② | 教育訓練費が5%以上増加、かつ 教育訓練費/雇用者給与等支給額 ≧ 0.05% | +10% |
| ③ | くるみん認定・プラチナくるみん・えるぼし(2段階目以上)・プラチナえるぼしのいずれか | +5% |
なお、いずれの要件も満たす場合には30パーセントが加算されます
**15% + 30% = 最大45%**です。
⚠️ ②は2つの条件を両方満たす必要があります。 「5%増やす」だけでなく、給与総額の0.05%以上という水準も要ります。⚠️ 教育訓練費が前期0円だと、増加率が計算できません。
教育訓練費に何が入るかも国税庁が定義しています。外部講師への謝金、施設の賃借料、外部に委託した研修の費用、社員を外部の研修に参加させる授業料・受講料などです。⚠️ 社内の役員・使用人が講師をした場合の費用は除かれます。
⚠️ 控除には上限があります
この税額控除限度額が、その事業年度の調整前法人税額の20パーセント相当額を超える場合には、その控除を受ける金額は、その20パーセント相当額が上限となります
法人税額の20%までです。増加額が大きくても、法人税が少なければそこで頭打ちになります。
そして、ここに救済があります。
🚩 控除しきれなかった分は、5年間繰り越せます
その控除しきれなかった金額(繰越税額控除限度超過額)について5年間の繰越しが認められます
⚠️ これは大きいと思いました。 利益が少ない年に賃上げをしても、控除枠を捨てずに済みます。
ただし条件があります。
ただし、税額控除限度超過額を控除する事業年度において、その法人の雇用者給与等支給額がその比較雇用者給与等支給額を超えることとの要件を満たす必要があります
⚠️ 繰り越した分を使う年も、給与等支給額が前年を超えている必要があります。 一度上げて翌年下げると、繰越分が使えません。
⚠️ 繰越には明細書の添付も要ります。繰越が生じた年以後、毎年の申告書に明細を付け続ける必要があります。忘れると消えます。
対象になる会社
適用対象法人は中小企業者または農業協同組合等で、青色申告書を提出するものです
資本金1億円以下が基本線です。⚠️ ただし大規模法人に株式の2分の1以上(複数なら3分の2以上)を持たれている法人は除かれます。
⚠️ もうひとつ除外があります。
適用除外事業者(その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人)に該当するものは除かれます
適用期間は、平成30年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度です。
決算賞与と、どう繋がるか
ここが書きたかったところです。
雇用者給与等支給額の定義を見ると、こうあります。
法人の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額
⚠️ **「損金の額に算入される」が基準です。ということは、要件を満たして未払計上した決算賞与も、その事業年度の給与等支給額に入る**と読めます。
つまり——
- 決算賞与を出す → その期の損金になる
- 同時に、その期の給与等支給額が増える
- 前年より1.5%増えていれば、増加額の15%が法人税から引かれる
「儲かった年にボーナスを出す」という判断が、税額控除にも繋がるということでした。
⚠️ ただし、決算賞与の未払計上には別の3要件があります。 そちらを落とすと損金になりませんし、損金にならなければ給与等支給額にも入りません。2つの制度の要件を両方満たす必要があります。
私がやること
⚠️ 調べて分かったのは、この制度は「賃上げしたから自動でもらえる」ものではないということでした。
確認する順番はこうだと思います。
- 誰の給与が「国内雇用者」に入るか(⚠️ 役員と、その親族を除く)
- その範囲で、前年より1.5%増えているか
- 法人税額の20%という上限に当たらないか
- 当たるなら、繰越の明細を毎年付けているか
⚠️ 1番を間違えると、全部ずれます。 そして中小企業ほど、役員と親族の給与の比率が高いので、ここでつまずきやすいと思いました。
役員報酬を「去年と同じ」で決めていると書きましたが、役員報酬はこの制度の対象外です。上げても、この控除には効きません。
まとめ
- 賃上げ促進税制は、給与等の増加額の15%(最大45%)を法人税額から直接控除する制度
- 基本要件は「前年より1.5%増」。それだけで15%
- 🚩 ⚠️ 役員と、役員と特殊の関係にある者(親族など)は「国内雇用者」に入らない
- 上乗せは、2.5%増で+15%/教育訓練費+10%/くるみん・えるぼし+5%。全部で+30%
- ⚠️ 教育訓練費の上乗せは「5%以上増加」と「給与総額の0.05%以上」の両方が必要
- ⚠️ 控除は法人税額の20%が上限。超えた分は5年間繰り越せる
- ⚠️ 繰越を使う年も給与等支給額が前年超であること、明細書を付け続けることが必要
- 決算賞与は損金算入されれば給与等支給額に入る。 2つの制度の要件を両方満たす必要がある
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この記事について
本記事は執筆時点(2026年8月)に国税庁が公表しているタックスアンサーNo.5927-2(令和7年4月1日現在法令等)にもとづいて書いています。筆者は税理士ではありません。
⚠️ 賃上げ促進税制は改正が続いている制度です。中小企業庁のページでは、令和8年4月1日以後に開始する事業年度について制度が強化される旨が案内されています。適用する事業年度によって要件や控除率が変わりますので、必ず最新の内容をご確認ください。
雇用者給与等支給額の範囲、雇用安定助成金額の取扱い、他の税額控除制度との調整など、実際の計算には細かい規定があります。 適用の可否と計算については、必ず顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。 本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務判断を示すものではありません。