労働保険事務組合の記事で、正直に書いたことがあります。

社長である私が労災に入れているのは、商工会議所に事務委託しているからです。 そして——給付基礎日額を選んだ記憶がありません。

書いたあとで気になって、調べました。

⚠️ 選べるどころか、毎年変えられるものでした。 そして選び方を間違えると、休んだときに効いてきます。

そもそも、社長が労災に入れる条件

先に前提を確認します。中小事業主が特別加入するには、2つの条件が要ります。

  1. 雇用する労働者について、労働保険の関係が成立していること
  2. 労働保険の事務処理を、労働保険事務組合に委託していること

2つ目があるので、事務組合が要ります。 商工会議所などに委託手数料を払っているのは、ここに繋がっています。

つまり、会費や手数料を払っているから入れているという構造です。会費のことを3本書いてきましたが、これはそのうちの1つが実際に効いている例でした。

給付基礎日額は16段階あります

本題です。給付基礎日額とは、保険料と給付額の両方を決める数字です。

給付基礎日額 保険料算定基礎額(日額×365)
25,000円 9,125,000円
22,000円 8,030,000円
20,000円 7,300,000円
16,000円 5,840,000円
12,000円 4,380,000円
10,000円 3,650,000円
8,000円 2,920,000円
6,000円 2,190,000円
3,500円 1,277,500円

3,500円から25,000円までの16段階です(表は抜粋です)。

年間保険料の計算はこうです。

年間保険料 = 保険料算定基礎額(給付基礎日額×365)× それぞれの事業に定められた保険料率

⚠️ 保険料率は業種によって違います。 同じ日額を選んでも、業種が違えば保険料は変わります。

⚠️ 国が「低いと給付も少ない」と書いています

ここが一番大事なところです。厚生労働省の資料にこう書いてあります。

給付基礎日額が低い場合は、保険料が安くなりますが、その分、休業(補償)等給付などの給付額も少なくなりますので、十分ご留意の上、適正な額を申請してください

当たり前のようですが、これは「安いほうを選んだ結果」が跳ね返ってくるということです。

休業補償は、給付基礎日額をもとに計算されます。 ⚠️ 日額3,500円で入っていれば、休んでも1日あたりその水準でしか出ません。 保険料は年間で数万円安くなりますが、長く休むことになったときの差は、そこでは済みません。

そして、社長が休むというのは、会社が止まるということです。

🚩 変えられます。しかも2つのタイミングがあります

調べていて一番驚いたのがここでした。給付基礎日額は、一度決めたら固定ではありません。

いつ 何で申請するか いつから変わるか
3月2日〜3月31日 給付基礎日額変更申請書 翌年度から
労働保険の年度更新期間中 保険料申告書内訳 または 給付基礎日額変更申請書 当年度から

年度更新のときに変えられるというのが実務的だと思いました。年度更新は毎年6月1日〜7月10日なので、そのときに一緒に見直せます。

⚠️ どちらも、監督署長を経由して労働局長あてに出すものです。事務組合に委託しているなら、そこに相談するのが早いはずです。

⚠️ ただし、事故が起きてからでは変えられません

これが決定打でした。

ただし、給付基礎日額の変更は、災害発生前に申請することが前提になります。給付基礎日額の変更申請前に災害が発生している場合は、当年度の給付基礎日額変更は認められません

当然といえば当然ですが、意味は重いです。

⚠️ 「怪我をしたから上げる」はできません。 そして怪我をするかどうかは、事前には分かりません。

つまり、この判断は「何も起きていないうちにしかできない」種類のものです。何も起きていないときは、見直す動機がない。 ここが、この制度のいやらしいところだと思いました。

何を基準に選ぶのか

では、いくらが「適正な額」なのか。国は金額の目安を示していません。「所得水準に見合った適正な額」とあるだけです。

私は、こう考えることにしました。

自分が3か月休んだとして、その間、家計と会社に何が必要か。 それを日割りにした金額です。

  • 役員報酬を365で割った額と、選んでいる日額を比べる
  • ⚠️ 役員報酬は、休んでも止まらないことが多い(定期同額給与なので)。だから単純に置き換える話ではない
  • むしろ効くのは、会社が回らなくなる分。代わりの人を頼む費用や、止まる売上

⚠️ 私はまだ答えを出せていません。 ただ、「事務組合が置いた額のまま」でいるのは、選んでいないのと同じだとは思いました。

うちの場合

選んだ記憶がない、ということは、たぶん最初に決まった額のままです。

⚠️ いくらになっているかも、把握していません。 ⚠️ これは、保険料を払い続けているのに中身を知らない状態で、会費のときと同じ構図です。

やることは決まりました。

  1. 今の給付基礎日額がいくらかを確認する(事務組合に聞けば分かるはずです)
  2. その額で3か月休んだらどうなるかを計算する
  3. 変えるなら、年度更新(6月1日〜7月10日)に合わせる

⚠️ 3番は、来年まで待つことになります。 ですが災害が起きてからでは変えられないので、先延ばしにする種類の話ではありません。

まとめ

  • 社長が労災に入れるのは、①労働者の保険関係が成立していて、②事務組合に委託しているから
  • 給付基礎日額は3,500円〜25,000円の16段階。 保険料も給付も、ここで決まる
  • 年間保険料=給付基礎日額×365×事業ごとの保険料率
  • ⚠️ 国が「低いと給付も少なくなる」と明記している
  • 🚩 毎年変えられる。 3月2日〜3月31日の申請なら翌年度から、年度更新期間中なら当年度から
  • ⚠️ 災害発生前でないと変更できない。「怪我をしてから上げる」は不可
  • ⚠️ 「選んだ記憶がない」は、選んでいないのと同じ

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この記事について

本記事は執筆時点(2026年8月)に厚生労働省が公表している「特別加入制度のしおり(中小事業主等用)」等の資料にもとづいて書いています。筆者は社会保険労務士ではありません。

特別加入の要件、給付基礎日額の選択肢、保険料率、変更手続の期間は、制度改正や業種によって変わることがあります。 また、給付基礎日額の決定は労働局長が行うものであり、申請どおりになるとは限りません。

ご自身の加入内容の確認や変更については、委託している労働保険事務組合、所轄の労働基準監督署、または社会保険労務士にご確認ください。 本記事は一般的な情報提供であり、個別の判断を示すものではありません。