消費税の中間納付の記事で、正直に書いたことがあります。
うちは納税資金を分けていません。普段の口座からそのまま払っています。
分けていない以上、足りなくなる可能性はゼロではありません。 そのときに何をするのかを、先に知っておきたくて調べました。
⚠️ 調べたら、借りる前にやることがありました。 そして期限が決まっていました。
国税には、猶予の制度が2つあります
国税庁が「猶予の申請の手引」を出しています。制度は2つです。
| どういうときか | |
|---|---|
| 換価の猶予 | 一時に納付すると、事業の継続または生活の維持を困難にするおそれがある |
| 納税の猶予 | 災害・病気・事業の休廃業など/本来の期限から1年以上経って納付すべき税額が確定した |
**多くの会社に関係するのは、上の「換価の猶予」**だと思います。払えないほどではないが、一度に払うと資金繰りが持たない——そういう場合です。
換価の猶予は、5つの要件を全部満たす必要があります
① 国税を一時に納付することにより、事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがあると認められること
② 納税について誠実な意思を有すると認められること
③ 換価の猶予を受けようとする国税以外の国税の滞納がないこと
④ 納付すべき国税の納期限から6か月以内に「換価の猶予申請書」が所轄の税務署に提出されていること
⑤ 原則として、猶予を受けようとする金額に相当する担保の提供があること
⚠️ ④が一番きついと思いました。納期限から6か月です。
放っておいて督促が来てから慌てる、では間に合わないことがあります。 これは払えないと分かった時点で動く種類の制度でした。
言葉の定義も、手引きにはっきり書いてあります。
「事業の継続を困難にするおそれがある」とは、事業に不要不急の資産を処分するなど、事業経営の合理化を行った後においても、なお国税を一時に納付することにより、事業を休止又は廃止させるおそれがある場合をいいます
⚠️ **「合理化を行った後においても」**とあります。何もせずに申請する話ではないということです。
「納税について誠実な意思を有すると認められる」とは、納税者がその国税を優先的に納付する意思を有していると税務署長が認めることができることをいいます
**「優先的に」**です。⚠️ 他の支払いを先にして税金を後回しにしている状態は、ここに当たらないと読めます。
⚠️ 担保は、要らない場合があります
⑤に「原則として担保の提供」とありますが、例外が3つあります。
① 猶予を受ける金額(未確定の延滞税を含みます。)が 100万円以下である場合
② 猶予を受ける期間が3か月以内である場合
③ 担保を提供することができない特別の事情がある場合
100万円以下なら担保は要りません。 ⚠️ 未確定の延滞税を含めて100万円なので、ぎりぎりの場合は注意が要ります。
猶予期間は1年以内。原則、毎月の分割です
換価の猶予を受けることができる期間は、1年の範囲内で、申請者の財産や収支の状況に応じて、最も早く国税を完納することができると認められる期間に限られます
⚠️ **「1年もらえる」ではありません。「最も早く完納できると認められる期間」**です。財産と収支を見て決められます。
なお、換価の猶予を受けた国税は、原則として猶予期間中の各月に分割して納付する必要があります
待ってもらえるのではなく、月々に割って払うという形です。
⚠️ やむを得ない理由があれば、当初の猶予期間が終わる前に申請することで、合わせて最長2年まで延長が認められることがあります。
認められると、何が変わるのか
手引きには、こう書かれています。
換価の猶予が認められると
- 既に差押えを受けている財産の換価(売却)が猶予される
- 事業の継続を困難にするおそれがある財産は、差押えが猶予(または解除)される場合がある
- ⚠️ 猶予が認められた期間中の延滞税が軽減される
納税の猶予が認められると
- 新たな差押えや換価などの滞納処分の執行を受けない
- 既に差押えを受けている財産は、申請により差押えが解除される場合がある
- ⚠️ 延滞税が軽減又は免除される
差押えを止められることと、延滞税が軽くなること——この2つが効果です。
🚩 ここが、借入との順番の話になります
消費税の記事で書いたとおり、**延滞税は令和8年で、納期限の翌日から2か月以内が年2.8%、それ以降は年9.1%**です。
9.1%は、銀行のプロパー融資より高い水準です。だから「借りて払ったほうが安いのでは」という発想が出てきます。
⚠️ ですが、順番が違うと思いました。
猶予が認められれば、その延滞税自体が軽くなります。 そして申請に費用はかかりません。 事業資金には序列があると書きましたが、税金については、その序列に入る前にもう一段あるということでした。
順番はこうだと思います。
- 払えないと分かった時点で、税務署に相談する
- 要件に当たるなら、納期限から6か月以内に猶予を申請する
- それでも足りないなら、資金調達の序列を上から
⚠️ 3から始めると、高いところから入ってしまいます。
⚠️ 国税の話です。他は別に確認が要ります
ここは注意が要るところだと思いました。
上に書いたのは、すべて国税(法人税・消費税・源泉所得税など)の制度です。
- 法人住民税・法人事業税などの地方税は、各自治体の猶予制度が別にあります
- 社会保険料も、年金事務所の別の手続きになります
⚠️ 払えないのは、たいてい国税だけではありません。 全部まとめて1か所で片づく話ではない、というのは知っておいたほうがいいと思いました。
うちの場合
納税資金を分けていない、というのは変わっていません。
⚠️ 調べて分かったのは、「困ってから調べる」では遅い制度だということでした。納期限から6か月という線があり、「合理化を行った後においても」という前提があり、「優先的に納付する意思」を見られます。
どれも、慌ててから整えられるものではありません。
私がやることは1つです。 ⚠️ 納税資金を別に分ける。 制度を調べた結論が「制度を使わずに済むようにする」になったのは、少し情けないですが、猶予は、分割して払える見込みがある人のための制度であって、払える状態を作るのが先だと思いました。
口座を分けるだけなら、今日でもできます。 法人口座の記事で「口座を増やすときに考えること」を書いたばかりでした。用途で分けるという話は、ここにも当てはまりました。
まとめ
- 国税の猶予は2つ。 多くの会社に関係するのは換価の猶予
- ⚠️ 要件は5つ全部を満たす必要がある。 うち**「納期限から6か月以内の申請」**が期限として効く
- 「事業の合理化を行った後においても」払えないこと、「優先的に納付する意思」があることが前提
- ⚠️ 100万円以下、または猶予期間が3か月以内なら担保は不要
- 猶予期間は1年以内で、原則として各月に分割納付。 やむを得ない理由があれば最長2年
- 効果は、差押えが止まることと、延滞税が軽減(納税の猶予は軽減又は免除)されること
- 🚩 借りる前に、まず猶予。 延滞税年9.1%と比べる前に、その延滞税自体を軽くする道がある
- ⚠️ 地方税と社会保険料は別の手続き
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この記事について
本記事は執筆時点(2026年8月)に国税庁が公表している「猶予の申請の手引」(令和8年4月)にもとづいて書いています。筆者は税理士ではありません。
⚠️ 猶予が許可されるかどうかは税務署長の審査によるもので、申請すれば必ず認められるものではありません。 一定の場合には不許可となり、許可後も取り消されたり期間が短縮されたりすることがあります。延滞税の軽減の程度、必要な添付書類、担保の要否は、金額や期間、個別の事情によって変わります。
地方税・社会保険料の猶予は、本記事の対象外です。 各自治体・年金事務所にご確認ください。
実際の申請にあたっては、必ず所轄の税務署または顧問税理士にご相談ください。 本記事は一般的な情報提供であり、個別の判断を示すものではありません。