会社で入っている生命保険の話を書きました。借入があるから、会社で、掛け捨てで入った——そういう話です。

書いたあとで、当たり前のことに引っかかりました。

あの保険が下りても、家には1円も入りません。受取人は会社だからです。

⚠️ 会社の保険と個人の保険は、受け取る人が違います。だから目的も違うし、税金も違います。そして、どちらか片方でもう片方は埋まりません。 調べて整理しました。

まず、受け取る人が違います

うちの会社の保険は、会社が受取人です。 前に書いたとおり、目的は借入の返済と、立て直す時間を買うことです。私がいなくなったとき、会社にお金が入ります。

家族には入りません。

家族の生活費、子どもの教育費、住宅ローン——そこを埋めるのは、個人で入る保険です。会社の保険が手厚くても、家族の側は別に見ないといけない、というのが最初の整理でした。

会社の保険 個人の保険
受取人 会社 家族
目的 借入の返済、事業の立て直し 生活費、教育費、住宅ローン
保険料を払う人 会社 自分
税金の扱い 法人税(損金か資産計上か) 所得税(生命保険料控除)、受取時は相続税など

同じ「生命保険」という名前でも、表の右と左はまったく別の話でした。

会社が受け取ったお金は、そのままでは家に届きません

ここが経営者ならではの落とし穴だと思いました。

会社が保険金を受け取ると、それは会社の益金(収入)です。家族に渡すには、会社から支払う形が要ります。 一般的なのは死亡退職金です。

国税庁の説明では、死亡退職金はこう扱われます。

被相続人の死亡によって、被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与を受け取る場合で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続または遺贈により取得したものとみなされて、相続税の課税対象となります。

そして非課税枠があります。

500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額

⚠️ つまり「会社の保険 → 会社 → 死亡退職金 → 家族」という経路が要ります。 保険に入っただけでは、この経路はつながりません。退職金として支給する根拠(規程や決議)が会社側に要るということです。

⚠️ 3年以内に支給が確定という期限もあります。私がいないときに、残った人がこの手続きを知っているか——保険に入るより、こちらのほうが不安になりました。

個人の保険は、受け取り方で税金が3つに分かれます

個人で入る保険は、誰が払って、誰が受け取るかで、かかる税金が変わります。 国税庁の整理はこうです。

被保険者 保険料を払う人 受取人 税金
本人 本人 家族 相続税
本人 家族 その家族 所得税(一時所得)
本人 家族 別の人 贈与税

経営者の場合、いちばん普通なのは1行目です。自分で払って、家族が受け取る。相続税になります。

そして相続税にも非課税枠があります

500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額

🚩 上の死亡退職金の枠と、この死亡保険金の枠は別です。 法定相続人が3人なら、保険金で1,500万円、退職金で1,500万円、それぞれ非課税です。⚠️ 会社の保険を退職金で渡し、個人の保険を家族が直接受け取ると、両方の枠が使えます。 これは片方だけでは出てこない形でした。

⚠️ 2行目(家族が払って家族が受け取る)は一時所得です。計算はこうです。

受け取った保険金の総額から既に払い込んだ保険料または掛金の額を差し引き、さらに一時所得の特別控除額50万円を差し引いた金額…その金額をさらに2分の1にした金額

払った保険料を引いて、50万円を引いて、半分。⚠️ 1行目と2行目で、同じ保険金でもかかる税金がまったく違います。 契約者を誰にするかは、加入時に決まってしまうので、あとから気づいても遅い部分です。

生命保険料控除は、個人の保険だけです

個人で払った保険料には、所得税の控除があります。 生命保険料控除です。

新契約(平成24年1月1日以後)の場合

支払った保険料(年) 控除額
20,000円以下 全額
20,000円超〜40,000円以下 保険料 × 1/2 + 10,000円
40,000円超〜80,000円以下 保険料 × 1/4 + 20,000円
80,000円超 一律40,000円

一般・介護医療・個人年金の3区分それぞれ最高4万円、合計で12万円が上限です。

⚠️ 年8万円を超えると、それ以上払っても控除は増えません。 「控除のために保険料を増やす」は、8万円のところで意味がなくなります。

⚠️ そして、会社が払っている保険料は、この控除の対象になりません。 保険料を負担しているのが会社だからです。会社の保険は会社の経費、個人の保険は個人の控除——ここも別です。

会社の保険の税金は、前に書きました

会社側の扱いは、前の記事にまとめてあります。要点だけ再掲します。

  • 2019年7月8日以降の契約は、最高解約返戻率で損金にできる割合が決まる
  • 掛け捨て(返戻率が低い)なら、今も全額損金
  • 年間保険料が1人あたり30万円以下なら全額損金という例外がある

うちは掛け捨てで入ったので、全額損金です。 ⚠️ **ただし、それは「会社の側の話」**で、家族に何が届くかとは関係がありません。

つまり、こういう構造でした

整理すると、こうなります。

会社の保険 個人の保険
何を守るか 借入、事業、従業員 家族の生活
お金の流れ 会社が受け取る → 退職金として家族へ 家族が直接受け取る
非課税枠(相続税) 死亡退職金: 500万円×法定相続人 死亡保険金: 500万円×法定相続人
保険料の税務 損金(掛け捨てなら全額) 生命保険料控除(最高12万円)
決めておくこと 退職金の支給根拠、3年以内の確定 契約者と受取人の組み合わせ

🚩 一番大事なのは、右と左が独立していることです。 会社の保険を手厚くしても家族の生活費は出ませんし、個人の保険を手厚くしても借入は消えません。

そして経営者は、両方を自分で決めないといけません。 会社員なら会社の保険は会社が決めますが、経営者は右も左も自分です。

私が確認すること

⚠️ 個人で何に入っているかを、ここに書くつもりはありません。 公開しているブログなので、そこは線を引きます。

ただ、この記事を書いて、確認する順番は決まりました。

  1. 会社の保険金を家族に渡す経路があるか——死亡退職金の規程、支給の決議の仕方、3年以内という期限を、残る人が知っているか
  2. 個人の保険の契約者と受取人の組み合わせ——相続税になる形か、一時所得になる形か
  3. 法定相続人の数から、非課税枠がいくらか——退職金と保険金で別々に
  4. 個人の保険料が、控除の上限(年8万円)を超えていないか——超えていれば、その分は控除に効いていない

⚠️ 1番が一番重いと思いました。 保険に入ることは自分で決められますが、受け取ったあとの手続きは、自分がいないときに他の人がやるからです。保険は入り口で、経路は出口——出口のほうを見ていませんでした。

どこから手をつけるかは、会社の借入の額と、家族の生活費の額で変わります。 借入の記事で書いた金額が左の話、役員報酬家計が右の話です。両方の数字を並べてから、保険の額を決める——順番はこれだと思います。

まとめ

  • 会社の保険は会社が受取人。家族には直接入らない
  • 会社が受け取った保険金を家族に渡すには、死亡退職金の形が要る——3年以内に支給確定、非課税枠は500万円×法定相続人
  • 個人の保険は、誰が払って誰が受け取るかで、相続税・所得税・贈与税に分かれる
  • 死亡保険金の相続税の非課税枠も500万円×法定相続人。 🚩 退職金の枠とは別
  • 生命保険料控除は個人の保険だけ。 3区分×最高4万円、合計12万円。年8万円を超えた保険料は控除が増えない
  • ⚠️ 会社の保険と個人の保険は独立している。片方で両方は埋まらない
  • 保険は入り口、受け取ったあとの経路が出口。 出口を先に確認する

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この記事について

本記事は執筆時点(2026年9月)に国税庁が公表しているタックスアンサー(死亡保険金の課税・生命保険料控除・相続税の非課税枠・死亡退職金)にもとづいて書いています。筆者は税理士でもファイナンシャルプランナーでもなく、保険の募集人でもありません。本記事は特定の保険商品を推奨するものではありません。

⚠️ 死亡保険金・死亡退職金の課税関係は、契約者・被保険者・受取人の組み合わせ、法定相続人の数、支給の時期によって変わります。 生命保険料控除の区分や上限は契約日によって異なります。会社側の経理処理は契約日と最高解約返戻率で変わります。

保障の額の決め方、契約の形、死亡退職金の規程については、必ず顧問税理士・保険の取扱窓口・必要に応じてファイナンシャルプランナーにご確認ください。 本記事は一般的な情報提供であり、個別の判断を示すものではありません。