うちは今、3種類の借入をしています。信用保証協会付きの融資、銀行のプロパー融資、そしてマル経融資です。
順に借りてきて分かったのは、事業資金には「借りる順番」があるということでした。そしてその順番を守れるかどうかは、困る前に動いていたかで決まります。
手形割引の記事で「手数料を払って早く現金にするのは損ではない」と書きました。それは本当です。ただし順番を飛ばしていい、という意味ではありません。 その続きの話をします。
資金の調達手段には、はっきりした序列があります
整理すると、こうなります。
| 順 | 手段 | 速さ | コスト |
|---|---|---|---|
| 1 | 銀行のプロパー融資 | 遅い | 一番安い |
| 2 | 信用保証協会付き・制度融資 | やや遅い | 安い(保証料が乗る) |
| 3 | マル経融資(商工会議所経由) | やや遅い | 安い(無担保・無保証人) |
| 4 | ビジネスローン・ノンバンク | 速い | 高い |
| 5 | 売掛金の早期現金化 | 最速 | 一番高い |
下に行くほど速く、高くなります。
そしてほとんどの失敗は、急いでいるという理由で下から入ることで起きます。上から順に当たっていれば安く済んだのに、時間がないから4や5に行く。その差は、金利にすると何倍にもなります。
うちが借りてきた順番
正直に書きます。
最初は信用保証協会付きでした。 これが普通だと思います。実績の浅い会社にいきなりプロパーは出ません。
プロパーは後からです。 ただし、ここは正直に書いておきます。うちのプロパーは、物価上昇に対応する特別融資の枠で借りたものです。純粋に会社の信用だけで引っ張ったものではありません。
「プロパーが出た=信用を勝ち取った」と胸を張れる話ではないというのが、自分の認識です。制度があるタイミングで、たまたま条件が合った。それだけだと思っています。
ただ、制度を使ったとしてもプロパーで借りた実績は残ります。 それが次に効いてくる、という順番の話ではあります。
保証協会付きとプロパーの違いは、保証料です
制度としての違いを整理しておきます。
信用保証協会付きは、公的機関が保証人になってくれる形です。銀行から見ればリスクが下がるので、実績の浅い会社でも借りやすくなります。
代わりに、金利とは別に保証料がかかります。 全国信用保証協会連合会の仕組みで、一般に年率1.5%前後とされています。金利と合わせると、体感のコストはそれなりになります。
プロパー融資は保証協会を通さず、銀行が直接貸す形です。保証料がかかりません。 その代わり銀行がリスクを全部負うので、決算内容と取引実績を厳しく見られます。
だから順番として、保証協会付きで実績を作り、そこからプロパーへという流れになります。
マル経融資は、知られていないのにいい制度です
3つ目が**マル経融資(小規模事業者経営改善資金)**です。うちも使っています。
日本政策金融公庫の制度で、条件がかなり良いものです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 担保・保証人 | 不要(保証協会の保証も不要) |
| 融資限度額 | 2,000万円 |
| 返済期間 | 運転資金7年以内(据置1年以内)/設備資金10年以内(据置2年以内) |
| 窓口 | 商工会議所・商工会 |
無担保・無保証人です。ここが大きい。代表者の個人保証を求められないというのは、小さい会社にとって相当な違いです。
そして個人事業主も対象です。小規模事業者向けの制度なので、むしろ一人でやっている方にこそ向いています。
ただし、条件が1つあります。ここが今日の本題です
マル経融資には、こういう条件があります。
原則6か月以上、商工会議所・商工会の経営指導を受けていること
つまり、思い立ってすぐには借りられません。
資金がショートしそうになってから商工会議所に駆け込んでも、6か月分の指導実績は作れません。 そこから半年待てる状況なら、そもそも困っていないはずです。
これが「枠は困る前に作れ」の、一番はっきりした実例だと思っています。
私は「借りられるなら借りる」という考え方です
ここは、一般に言われていることと逆かもしれません。
**「借金は少ない方がいい」「無借金経営が理想」**という話をよく聞きます。私はそう思っていません。借りられるなら、借ります。
理由は単純です。
借りられる状態は、ずっと続きません。
融資が出るのは、会社が元気なときです。決算が良くて、売上が読めて、返済も滞っていない。その状態のときだけ、銀行は貸してくれます。
そして本当に金が要るのは、たいていその逆の状況です。仕事が減った、大きな支払いが来た、取引先が飛んだ。そのときには、もう借りられません。
つまり、
- 借りたいときには、借りられない
- 借りられるときには、借りたくない
この食い違いが、資金繰りで一番効いてくる部分だと思っています。だから借りられるうちに借りておく。 手元に現金があること自体が、判断の自由度になります。
- 仕事を選べる(安い仕事を焦って取らずに済む)
- 設備を入れられる(機会が来たときに動ける)
- 取引先が飛んでも、すぐには倒れない
利息は、その自由度に対して払っているコストだという整理です。手形割引の記事で書いた「手数料を払うのは損ではない」と、根は同じ考え方です。
⚠️ ただし、返せる範囲でという前提は外せません。 借りること自体が目的になると、返済で首が回らなくなります。**「借りられるだけ借りる」ではなく「借りられるうちに、返せる分を借りておく」**です。ここは自分の返済能力を冷静に見る必要があります。
融資は、必要になる前に動くものです
マル経に限らず、融資は全部この構造です。
- 決算が良いときの方が通る。 悪くなってからでは遅い
- 付き合いのある銀行の方が早い。 初めての銀行は時間がかかる
- 借りた実績があると、次が早い。 返済の履歴そのものが信用になります
「今は借りる必要がないから」と何もしないのは、選択肢を持たないのと同じです。
私が今3種類の借入を持っているのは、綿密に計画したからではありません。借りられるときに借りてきた結果です。ただ、もしそのとき何の付き合いもなければ、もっと高い方法を選ぶしかなかったとは思います。
ではビジネスローンやファクタリングは、いつ使うのか
正直に書きますが、私はビジネスローンもノンバンクも使ったことがありません。
理由は簡単で、上の3つで足りているからです。使わずに済んだのは、判断が優れていたからではなく、先に枠があったからです。
そのうえで、下の手段が無意味だとは思っていません。
- 上の3つは、どれも時間がかかります。 審査に数週間かかることもある
- 今週払わないといけないお金には間に合いません
- そのときに使うのが4と5です
手形割引の記事でも書いたとおり、手数料を払って早く現金にすること自体は、悪い判断ではありません。 銀行から借りれば利息を払うのと同じことです。
問題は順番です。
- 上を全部当たったうえで、足りない・間に合わない → 合理的
- 面倒だから、通らなそうだから、いきなり下 → 高くつく
そして下の手段を繰り返し使っている状態は、資金繰りではなく採算の問題です。ここも手形の記事と同じ結論になります。
上を当たり尽くしても足りない場合
そのうえで、現実にこういう状況はあります。
- 銀行に相談したが、審査に数週間かかると言われた
- 決算の内容で、今は追加の融資が出ないと言われた
- それでも支払いの期日は動かせない
このとき使うのが、**銀行以外の事業者向けローン(ノンバンク)**です。審査が速く、最短で即日というところもあります。
⚠️ 金利は銀行より確実に高くなります。 銀行が貸せないリスクを引き受けている分が乗るので、当然です。前半で書いたとおり、そのコストには理由があります。 ただ、理由があることと、払うべきかどうかは別です。
だから使うなら、この順番で確認してください。
- 上の3つ(プロパー・保証協会付き・マル経)を先に当たったか
- 返済計画を、借りる前に立てたか(毎月いくら、何か月で返すのか)
- 一度きりで終わる話か(続くなら採算の問題です)
3つ目が一番大事だと思っています。つなぎとして一度使うのと、毎月使い続けるのはまったく違う話です。
なお、この手のサービスは法人限定のものが多いです。以下は法人向けで、審査の申し込み自体は無料でできます。個人事業主の場合は対象外なので、日本政策金融公庫や商工会議所に先に相談してください。
これから借りる人へ
順番としては、こうなると思います。
- 今すぐ必要でなくても、取引銀行に相談しておく(融資の話は、雑談からで構いません)
- 保証協会付きから実績を作る(プロパーはその後)
- 小規模事業者なら、商工会議所に行っておく(マル経は指導6か月以上が条件。早く始めるほど早く使える)
- 決算が良い年こそ、借りておく(悪くなってからでは出ません)
- 上を持ったうえで、緊急時の手段を知っておく
5だけを知っている状態が、一番危ないと思っています。
そして繰り返しになりますが、借りられるときと、借りたいときは一致しません。 今借りる必要がないと感じているなら、それは動くのに一番いいタイミングだということでもあります。
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この記事について
本記事は執筆時点(2026年8月)の制度と、筆者自身の経験にもとづいて書いています。融資の条件・金利・保証料は、金融機関や制度、事業者の状況によって異なります。 制度の内容は改正されることがあり、特別融資などの枠は時期によって設けられたり終了したりします。実際の資金調達にあたっては、取引金融機関・商工会議所・顧問税理士にご相談ください。 本記事は特定の金融機関やサービスの利用を勧めるものではありません。