私は、開業届を出していません。
会社の代表をしています。会社の方はもちろん法人として申告しています。 その話ではありません。
会社とは別に、個人でやっていることがいくつかあります。このブログもそのひとつです。
そちらについては、まだ何も出していません。 収入がまとまって出ていないからです。
ただ、調べてみて分かりました。「収入が出てから考える」は、いちばん損をする順番でした。
開業届の期限は「1か月以内」です
国税庁の案内には、こう書かれています。
事業の開始等の日から一ヶ月以内に税務署長に提出してください
提出先は住所地を管轄する税務署です。e-Taxでも出せます。
⚠️ 出さなかった場合の罰則は、規定されていません。 ここは正直に書きます。「1か月を過ぎたらもう出せない」ということもありません。 遅れても受け付けてもらえます。
だから**「開業届は急がなくていい」**という話をよく見ます。
半分は正しいです。でも、半分は違います。
急ぐべきなのは、開業届ではなく、もう1枚の方です
急ぐ必要があるのは、所得税の青色申告承認申請書です。
国税庁の説明によると、期限はこうです。
| 状況 | 期限 |
|---|---|
| すでに事業をしている | 青色申告をしようとする年の3月15日まで |
| その年の1月16日以後に新たに開業した | 開業の日から2か月以内 |
こちらは、遅れたら終わりです。
期限を過ぎると、その年は青色申告ができません。 適用は翌年からになります。
開業届は遅れても取り返せます。青色申告承認申請書は取り返せません。 ここが、いちばん大きな違いです。
青色申告で、何が変わるのか
金額で見ると分かりやすいと思います。
| 控除額 | 条件 |
|---|---|
| 65万円 | 正規の簿記により記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付し、電子帳簿保存またはe-Taxで申告 |
| 55万円 | 正規の簿記により記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付して期限内に提出 |
| 10万円 | 上記以外の青色申告者 |
55万円と65万円の差は、e-Taxで出すかどうかだけです。紙で出すと10万円損をする、という言い方もできます。
控除以外にもあります。
- 青色事業専従者給与 — 15歳以上の親族で、事業に専ら従事している人への給与を必要経費にできる
- 純損失の繰越し — 赤字を翌年以後3年間繰り越して控除できる
- 貸倒引当金 — 売掛金等の5.5%以下(金融業は3.3%)を必要経費にできる
始めた年は赤字になることが多いはずです。 その赤字を3年間持ち越せるかどうかは、申請書1枚を出したかどうかで決まります。
⚠️ 開業届を出したから「事業所得」になる、ではありません
ここは誤解しやすいところです。私も誤解していました。
開業届は、届出です。 これを出したから所得の区分が決まる、という性質のものではありません。事業所得か雑所得かは、実態で判定されます。
そして判定に効くのが、帳簿です。
国税庁の案内によると、記帳と帳簿等の保存の義務は、所得税の申告が必要ない人にもあります。
| 記帳の内容 | |
|---|---|
| 白色申告 | 取引の年月日・相手方・金額・摘要などを記載する簡易な方式 |
| 青色申告 | 正規の簿記の原則に従って取引を記録 |
保存期間は帳簿が7年、その他の書類が5年です。
「開業届を出す」より「帳簿をつけて残す」方が、実質的には重いということになります。
副業なら、20万円という線があります
給与をもらいながら個人でも何かしている人は、ここを見ることになります。
国税庁の説明では、給与所得・退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円を超える人は確定申告が必要とされています。
⚠️ 20万円は「所得」です。売上ではありません。 収入から必要経費を引いた後の金額です。売上が30万円でも、経費が15万円なら所得は15万円になります。
⚠️ そして、これは所得税の話です。 住民税にこの基準はありません。20万円以下でも、住民税の申告が必要になることがあります。 お住まいの市区町村に確認してください。
⚠️ 経営者は、もうひとつ見るところがあります。
同じ国税庁のページに、同族会社の役員についての記載があります。その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人は、確定申告が必要です。
20万円という線とは別の話です。 会社に土地や建物を貸している人、会社にお金を貸して利息を受け取っている人は、役員社宅の話ともつながってきます。
私が、まだ出していない理由
収入がまとまって出ていないからです。
これは事実です。ただ、調べて気づいたことがあります。
「出てから考える」と、青色申告の2か月を逃す形になっています。
開業届の期限は「事業の開始等の日から1か月」です。そして青色申告承認申請書は「開業の日から2か月」。
では、いつが開業の日なのか。
これは、自分で判断することになります。 収入が出た日ではありません。始めた日です。
始めた日をいつと見るかで、期限が動きます。 そして判断を先送りにしている間に、遡って出せる期限は過ぎていきます。
制度は、待った人が損をする形になっていました。 これが、調べていちばん意外だったところです。
発注する側から見ると、別の話になります
私は発注する側でもあります。
外注先が個人事業主かどうか、開業届を出しているかどうかは、こちらの経理処理にも関わります。
外注費が給与と判断されるリスクは、発注側の問題です。そしてインボイスの登録をするかどうかの判断も、受注側は同じ時期に迫られます。
発注する側と、これから受注する側。 私は今、両方の立場にいます。 同じ書類を、逆の側から見ることになりました。
出す前に、決めておくことは3つです
| 決めること | |
|---|---|
| ① | 開業の日をいつにするか(青色申告の2か月は、ここから数える) |
| ② | e-Taxを使うか(65万円と55万円の差は、ここだけ) |
| ③ | 帳簿をどうつけるか(正規の簿記でないと、65万円も55万円も使えない) |
③が決まっていないなら、①と②を決めても意味がありません。 青色申告の控除は、帳簿があって初めて成立するからです。
私は、③から決めます。
これから出す人へ
私はまだ出していないので、書類作成のサービスも使っていません。 ここから先は、これから出す人向けの話として読んでください。
開業届と青色申告承認申請書は、税務署でもらって手書きで出せます。 費用はかかりません。その方法で何の問題もありません。
ただ、2枚同時に作れて、そのまま提出まで進めるサービスもあります。青色申告承認申請書を出し忘れるのが一番もったいないので、2枚セットで作れることには意味があると思います。
あわせて読みたい
- 外注費が給与と判断されるとき|発注する側とされる側の両方から
- 電子帳簿保存法で、実際にやったこと
- 記帳は自分、決算は税理士|自分が何を頼んでいるか分かっていなかった
- 労災に入れているのは、労働保険を商工会議所に委託しているからだった
この記事について
本記事は執筆時点(2026年8月)の制度内容にもとづいて書いています。税制は毎年改正されます。 提出期限・控除額・適用条件は変わることがあるため、実際の手続きの際は国税庁の最新の案内、または所轄の税務署・税理士にご確認ください。 また所得区分(事業所得か雑所得か)の判定は個別の実態によるものであり、本記事は特定の判定を保証するものではありません。