家を買うか、借りたままでいくか。ここ最近、まじめに考えています。

まだ結論は出ていません。ただ調べていくうちに、経営者には選択肢がもう一つあることが分かりました。役員社宅です。

世の中の「持ち家か賃貸か」という記事は、ほぼすべて会社員を前提に書かれています。役員社宅に触れているものは、ほとんど見当たりませんでした。 けれど中小企業の経営者にとっては、これが一番効く可能性があります。

この記事は、買う・借りる・社宅にする、の3つを比べて考えた記録です。

今のところ、私は賃貸に傾いています

先に自分の立ち位置を書いておきます。

会社を経営していると、手元の現金の自由度がそのまま経営の余裕になります。頭金でまとまった現金を出し、その後何十年も返済が固定される。これが個人の話で済まないのが、経営者の持ち家です。

会社の資金繰りが厳しくなったとき、個人の住宅ローンも同時に背負っているのは、率直に怖い。身軽でいたいというのが今の気持ちです。

その前提で調べていて、「では賃貸のまま、もっと有利にできないか」という話にたどり着きました。

経営者には「役員社宅」という選択肢がある

仕組みは単純です。

役員個人が部屋を借りるのではなく、会社が借りて、それを役員に貸す。

契約者が会社になるので、家賃は会社が払います。そして会社が負担した分は経費(損金)になります。 個人で払っていた家賃が、会社の経費に変わる、というのが基本の考え方です。

ここまでは、よく説明されている部分です。問題はこの先でした。

一番の落とし穴:タダで貸すと「給与」になる

調べていて、最初に引っかかったのがここです。

国税庁の説明では、こうなっています。

  • 役員から「賃貸料相当額」を受け取っていれば、給与として課税されない
  • 無償で貸した場合は、賃貸料相当額が給与として課税される
  • 賃貸料相当額より低い家賃しか受け取っていない場合は、その差額が給与として課税される

つまり、会社が借りて役員にタダで住まわせると、その分が役員の給与とみなされて所得税がかかります。

「社宅にすれば家賃が全部経費になって個人の負担がゼロ」──そんな話ではありませんでした。一定額を会社に払う必要がある、というのが正確なところです。

では、いくら払えばいいのか。ここが本題です。

いくら払えば給与にならないのか

計算方法は、部屋の広さによって変わります。

まず「小規模な住宅」に当たるかどうかを見ます。

建物の法定耐用年数 小規模な住宅となる床面積
30年以下 132平方メートル以下
30年超 99平方メートル以下

(区分所有の建物は、共用部分を按分して判定します)

小規模な住宅に当たる場合、賃貸料相当額は次の3つの合計です。

  1. (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)× 0.2%
  2. 12円 ×(その建物の総床面積(平方メートル)÷ 3.3平方メートル)
  3. (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)× 0.22%

小規模な住宅に当たらない場合は計算が変わります。

  • 会社が他から借りている場合 … 会社が支払う家賃の**50%**と、上記の算式で求めた額の、いずれか多い方
  • 会社が自分で所有している場合 … (建物の課税標準額×12%+敷地の課税標準額×6%)÷12(耐用年数30年超の建物は12%が10%になります)

つまり 一般的な広さの賃貸住宅なら、上の3つの合計額を会社に払えばいいということになります。この金額は、実際の家賃と比べるとかなり低くなるのが普通です。

豪華社宅は対象外

ただし例外があります。いわゆる豪華社宅です。

床面積が240平方メートルを超えるもののうち、取得価額、支払賃貸料の額、内外装の状況等各種の要素を総合勘案して判定します。

さらに、

床面積が240平方メートル以下のものであっても、一般に貸与されている住宅等に設置されていないプール等の設備や役員個人のし好を著しく反映した設備等を有するものについては、いわゆる豪華社宅に該当することとなります。

豪華社宅に当たると、上の算式は使えず、通常支払うべき使用料相当額が基準になります。

うちには縁のない話ですが、「広くて豪華なら得」ではないという線引きは知っておいて損はありません。

調べていて気づいた、現実的な壁

制度の説明はここまでです。ここからは、実際にやろうとすると引っかかりそうな点です。

① 固定資産税の課税標準額が分からないと計算できない

上の算式には建物と敷地の固定資産税の課税標準額が必要です。

これは自分の持ち物ではないので、手元にありません。 大家さんや管理会社に聞くか、所定の手続きで確認することになります。借りている部屋の税額を教えてくださいと頼むのは、正直ハードルがあります。

制度としては使えても、この1点で止まる人は多いのではないかと感じました。

② 会社名義で契約できるとは限らない

法人契約に対応していない物件があります。特に個人の大家さんだと、会社契約を嫌がることがあります。物件探しの段階で選択肢が狭まる可能性があります。

③ 役員を辞めたらどうなるのか

会社が借りている以上、役員でなくなればその部屋に住み続けられるとは限りません。 事業承継や引退を考えるなら、そのときどうするかを先に決めておく必要があります。

④ 役員報酬とセットで考えないと意味が薄い

これが一番大事だと思いました。

社宅にすると会社の経費は増えます。役員報酬をそのままにして社宅も用意したら、単に会社の支出が増えるだけです。

本来の考え方は、役員報酬を下げて、その分を会社が家賃として負担するというものです。役員報酬が下がれば、所得税・住民税・社会保険料も下がります。手取りの中から家賃を払っていた構図が変わる、というのがこの仕組みの本質でした。

つまりこれは「家賃が経費になる」という話ではなく、報酬の受け取り方を変える話です。ここを理解せずに社宅だけ導入しても、期待した効果は出ません。

持ち家と比べてどう思ったか

整理すると、私にとってはこう見えています。

持ち家 賃貸(個人契約) 役員社宅
手元の現金 頭金で減る 減らない 減らない
身軽さ 低い 高い 中(会社契約の制約あり)
税負担 住宅ローン控除など 特になし 報酬とセットで下がる可能性
手間 少ない 多い(計算・契約・管理)

**持ち家の最大の弱点は、経営者にとっては「身軽さを失うこと」**だと考えています。会社の資金繰りと個人の返済を同時に抱える状態は、できれば避けたい。

一方で役員社宅の弱点は、手間です。制度としては有利でも、課税標準額を調べ、法人契約できる物件を探し、毎月きちんと精算する。その手間に見合うかどうかが判断の分かれ目になります。

今の結論

私はまだ決めていません。 ただ、今の時点ではこう考えています。

  • 持ち家は、当面見送る。 経営の自由度を優先したい
  • 役員社宅は、真剣に検討する価値がある。 ただし役員報酬の見直しとセットで考える
  • まずは固定資産税の課税標準額を確認できるかどうかを調べる。 そこが分からなければ話が始まらない

そして何より、この話は必ず税理士に相談してから動くべきだと感じました。給与課税の判定が絡むので、自己流でやると後から指摘を受ける類の話です。

「持ち家か賃貸か」で悩んでいる経営者の方は、その二択の前に、もう一つ選択肢があることだけでも知っておくといいと思います。

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会社の実務で、同じように自分で調べて整理したものです。


この記事について

本記事は、公開時点で国税庁が公表している情報と、筆者自身の検討経過をもとに整理したものです。役員社宅の取扱いは、建物の条件や契約の形態によって結論が変わります。 また税制は改正されることがあります。実際に導入を検討される際は、必ず国税庁の該当ページで最新の情報をご確認いただき、顧問税理士にご相談ください。本記事は特定の判断を推奨するものではありません。

参考にした公式情報