個人事業主をしていると、ある年の6月に、税務署から見慣れない通知が届くことがあります。「予定納税額の通知書」です。
確定申告は3月に済ませたはずなのに、7月と11月にも所得税を払うように書いてある。開業して2年目、3年目あたりで初めて受け取って、戸惑う人が多い書類だと思います。
国税庁の案内を読んで調べてみると、これは追加の税金ではありませんでした。今年の所得税の一部を、前年の実績をもとに先に払っておく仕組みです。 そして、今年の売上が落ちているなら、減らしてもらう申請ができます。2026年(令和8年分)の第2期は11月30日、第2期分だけの減額申請は11月16日が期限です。
先に答えを書きます
| 項目 | 2026年(令和8年分)の内容 |
|---|---|
| 対象になる人 | 前年分の申告納税額などで計算した「予定納税基準額」が15万円以上の人 |
| 通知 | 6月15日までに税務署から書面またはe-Taxで届く |
| 1回の金額 | 予定納税基準額の3分の1 |
| 第1期 | 7月1日から7月31日まで(振替納税は7月31日に引き落とし) |
| 第2期 | 11月2日から11月30日まで(振替納税は11月30日に引き落とし) |
| 第1期・第2期の減額申請 | 7月1日から7月15日まで(今年はもう終わっています) |
| 第2期分だけの減額申請 | 11月1日から11月16日(月)まで |
| 払いすぎ・不足 | 翌年の確定申告で精算する |
11月の第2期分は、まだ減額の申請が間に合います。ただし申請が通って減った分は、なくなるわけではありません。年間の税額が足りなければ、翌年3月の確定申告でまとめて払うことになります。
予定納税は「今年の税金の前払い」です
国税庁のタックスアンサー No.2040では、予定納税をこう説明しています。
その年の所得税および復興特別所得税の一部をあらかじめ納付しなければならないとされている制度です。
目的として挙げられているのは、一度に払うときの負担感をやわらげることと、国の歳入を平準化することです。
7月と11月に払った分は、翌年の確定申告で計算した税額から差し引かれます。確定申告書には「予定納税額」を書く欄があり、令和8年分の予定納税の説明書では、ここを書き忘れると納める税金が過大に計算されてしまう、と注意しています。
払った分は二重取りされるわけではなく、確定申告で精算されます。 予定納税のほうが多ければ、差額は還付されます。
金額は、前年の申告納税額の3分の1ずつです
計算はシンプルです。原則として、その年の5月15日の時点で確定している前年分の申告納税額が、そのまま「予定納税基準額」になります。これが15万円以上なら予定納税の対象です。
そして予定納税額は、基準額の3分の1ずつを第1期と第2期の2回に分けて払います。
たとえば前年分の確定申告で納めた所得税(復興特別所得税を含む)が45万円だった人なら、こうなります。
| 時期 | 払う額 |
|---|---|
| 7月(第1期) | 15万円 |
| 11月(第2期) | 15万円 |
| 翌年3月(確定申告) | 今年の年税額から30万円を引いた残り |
今年の所得が前年と同じなら、3月に払うのは残りの15万円です。3回に分けて払う形になります。
前年の所得に譲渡所得や一時所得、退職所得などが含まれていた場合は、それを除いて計算し直した金額が基準額になります。
もうひとつ、令和8年分ならではの注意があります。国税庁は、令和8年度税制改正による基礎控除の見直しは予定納税額の計算には考慮しておらず、確定申告で精算すると書いています。
なぜ開業2〜3年目に突然来るのか
仕組みを見ると、理由ははっきりしています。基準になるのが「前年分の申告納税額」だからです。
開業した年の所得税は、翌年3月の確定申告で初めて確定します。その申告納税額が15万円以上なら、その年の6月に通知が届きます。
前年に確定申告で納めた税額がない人なら、開業1年目に予定納税の通知は来ません。最初の年は経費がかさんで税額が小さく、利益が出てきた年の翌年に初めて15万円を超える、という順番になると、通知が来るのは開業3年目になります。
通知が来た年は、お金の出ていき方が一気に変わります。 3月に前年分の所得税を1年分払い、7月と11月にさらに3分の1ずつ払う。前年分の税額のおよそ1.7倍が、1年のあいだに出ていく計算です。
開業2〜3年目に資金繰りが急に苦しく感じるなら、この重なりが一因かもしれません。翌年以降は前払いした分が3月の支払いから引かれるので、1年あたりの負担は落ち着いていきます。
減額の申請ができるのは、今年の税金が少なくなりそうなとき
予定納税の額は前年の実績で決まります。今年の業績は関係ありません。そのため、今年は前年より明らかに所得が少なくなるという人のために、減額の申請手続があります。
国税庁の減額申請手続の案内では、申請できる例として次のような場合を挙げています。
- 廃業や休業、失業をした場合
- 業況不振などで、今年の所得が前年より明らかに少なくなると見込まれる場合
- 災害や盗難、横領で事業用資産に損害を受けた場合
- 医療費控除や扶養控除など、今年の所得控除や税額控除が前年より増える場合
売上が大きく落ちた年、年の途中で廃業した年、赤字になりそうな年が、典型的に当てはまります。今年の申告納税額を見積もってみて、通知された予定納税基準額より少なくなりそうなら、申請を考える場面です。
基礎控除の見直しで税額が下がる分は、減額申請の理由になりません。 国税庁は、令和8年度税制改正による基礎控除の見直しは申告納税見積額の計算でも考慮しない、と明記しています。
申請の期限は2回あります
減額の申請は、いつ出すかで対象が変わります。
| いつ出すか | 対象 | 見積もりの基準日 | 2026年の期限 |
|---|---|---|---|
| 7月 | 第1期分と第2期分 | 6月30日の現況 | 7月15日(水) |
| 11月 | 第2期分のみ | 10月31日の現況 | 11月16日(月) |
本来の期限は11月15日ですが、2026年は日曜日にあたるため、翌日の11月16日が期限になります。
7月の申請を逃していても、11月に第2期分だけの減額を申請できます。夏以降に仕事が減った人や、秋になって今年の数字が見えてきた人は、こちらが使えます。
11月の申請は、10月31日時点の状況で今年の税額を見積もります。 1月から10月までの実績と、年末までの見込みをもとに計算することになります。
提出は「予定納税額の7月(11月)減額申請書」を所轄の税務署へ出します。e-Taxでも、書面の持参・郵送でもかまいません。見積額の計算の基礎となる事実を書いた書類の添付が必要です。申請に対しては、税務署が承認・一部承認・却下のいずれかを書面で知らせてきます。
減額のデメリットは、翌年3月に戻ってくることです
減額申請は、払う税金そのものを減らす手続ではありません。年の途中で前払いする額を減らすだけです。
最終的な年税額は、翌年3月の確定申告で決まります。減額を受けたあとで年末に大きな入金があり、結果的に年税額が前年並みになった場合は、減らした分を含めた不足額を確定申告でまとめて払うことになります。
減額で手元に残したお金は、3月まで使わずに取っておくのが安全です。 秋の時点の見積もりが甘いと、11月に払わなかった分が3月に重なって返ってきます。
反対に、減額をせずに払いすぎた場合も、確定申告で還付されます。どちらを選んでも年間の税額は同じで、変わるのは払う時期です。減額するかどうかは、11月に払うのが資金繰りとして苦しいかどうかで決めてよい話だと思います。
払い方は、振替納税にしておくと忘れません
基準額が15万円以上である限り、予定納税は毎年同じ時期にやってきます。
令和8年分の説明書によると、振替納税を使っている人は、第2期分が11月30日に指定口座から自動で引き落とされます。振替依頼書はe-Taxでも出せて、金融機関の届出印は要らないとされています。
そのほか、ダイレクト納付やインターネットバンキング、クレジットカード納付も使えます。納付書で払う場合、予定納税額が30万円以下ならコンビニでも払えます。
注意したいのは残高です。振替納税で残高が足りず引き落とされなかった場合も、期限に遅れたのと同じく、翌日から延滞税がかかります。2026年の第2期分なら、12月1日から延滞税の対象になります。
法人には、名前の違う「中間申告」があります
予定納税は、個人の所得税の制度です。会社(法人)の法人税には、同じ役割をする「中間申告」があります。前期の実績で計算する方法は「予定申告」と呼ばれていて、名前も少し似ています。
国税庁の法人税のあらましによると、事業年度が6か月を超える法人は、原則として期首から6か月を経過した日から2か月以内に中間申告書を出します。前期の法人税額をもとに計算した金額が10万円以下なら、提出は要りません。1年決算の会社なら、国税庁の案内のとおり、前期の確定法人税額が20万円を超えると予定申告と納税の義務が出てきます。
法人の中間申告には、前期の実績で払う方法のほかに、期首から6か月で仮決算をして申告する方法もあります。業績が落ちた年に負担を抑える手段がある点は、個人の減額申請と似ています。
消費税の中間申告は、個人と法人の両方にあります。タックスアンサー No.6609では、前年(法人は前事業年度)の消費税の年税額が48万円を超える事業者が対象です。課税事業者の個人事業主なら、所得税の予定納税と消費税の中間申告が両方来ることもあります。消費税のほうは消費税の中間納付の記事にまとめています。
まとめ
- 予定納税は、今年の所得税の一部を前年の実績で先に払う制度。翌年の確定申告で精算される
- 対象は、前年分の申告納税額などで計算した予定納税基準額が15万円以上の人
- 通知は6月15日まで。7月と11月に、基準額の3分の1ずつ払う
- 2026年の第2期は11月2日から11月30日まで。振替納税は11月30日に引き落とし
- 開業2〜3年目に初めて届くのは、前年分の税額が基準になるから。その年は3月・7月・11月と支払いが重なる
- 今年の税額が少なくなりそうなら減額申請ができる。第2期分だけの申請は2026年は11月16日(月)まで
- 減額しても年税額は変わらない。足りなければ翌年3月の確定申告でまとめて払う
- 法人には所得税の予定納税はないが、法人税の中間申告(予定申告)がある。消費税の中間申告は個人にも法人にもある
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この記事について
本記事は執筆時点(2026年10月)に国税庁が公表している情報(タックスアンサー No.2040 予定納税、令和8年分 予定納税について、所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続、タックスアンサー No.6609 中間申告の方法、法人税のあらましと申告の手引、法人税の予定申告に関するお知らせ)にもとづいて書いています。筆者は税理士ではありません。
文中の計算例は仕組みを説明するための単純化した例です。予定納税基準額は、前年の所得の内容によって通知書の計算どおりにならない場合があります。減額申請の見積額の計算や、特別農業所得者・災害による減額の扱いは、記事では詳しく触れていません。
ご自身の予定納税や減額申請については、必ず顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。 本記事は一般的な情報提供であり、個別の判断を示すものではありません。