ストレスチェックは、従業員が50人以上いる会社がやるもの。そう覚えている経営者は多いと思います。
2025年の労働安全衛生法の改正で、50人未満の事業場にも実施の義務がかかることになりました。施行日は後から政令で決めることになっていましたが、2026年6月に政令が出ていて、2028年(令和10年)4月1日に決まっていました。
小さい会社や、人を雇っている個人事業主が何をしなければならないのか。厚生労働省の資料で調べた記録です。
先に答えを書きます
| 50人以上の事業場 | 50人未満の事業場 | |
|---|---|---|
| ストレスチェックの実施 | 義務(2015年12月から) | 今は努力義務。2028年4月1日から義務 |
| 頻度 | 1年以内ごとに1回 | 同じ |
| 検査をする人(実施者) | 医師・保健師など | 同じ。外部機関への委託が原則として推奨 |
| 高ストレス者から申出があったとき | 医師の面接指導をする義務 | 同じ |
| 個人の結果を会社が受け取る | 本人の同意が必要 | 同じ |
| 集団分析・職場環境の改善 | 努力義務 | 努力義務 |
| 労働基準監督署への結果報告 | 義務 | 不要 |
| 面接指導をする医師 | 産業医など | 地域産業保健センターに頼めば無料 |
2028年4月からは、人数にかかわらず「年1回の検査」と「申出があったときの面接指導」が義務になります。50人の線で残るのは、労働基準監督署への報告が要るかどうかです。順に書きます。
何が、いつ変わるのか
ストレスチェックは、2014年の法改正で作られた制度で、2015年12月1日から実施が義務になっています。ただし常時使用する労働者が50人未満の事業場は、法律の附則で「当分の間、努力義務」とされてきました。
佐賀労働局の発表資料には、こう書かれています。
令和7年5月14日に改正労働安全衛生法が公布され、常時使用する労働者数50人未満の事業場においてもストレスチェックの実施が義務付けられることとなりました。その施行日は、令和8年6月10日に公布された政令第195号により、令和10(2028)年4月1日と定められました。
厚生労働省のストレスチェック制度のページの見出しも「令和10年4月1日から、労働者数50人未満の事業場にも ストレスチェックが義務化されます。」です。
あわせて、厚生労働省は2026年2月に「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を出しています。50人未満の事業場向けに、手順をまとめたものです。この記事の多くは、このマニュアルをもとにしています。
「50人」は会社ではなく、事業場で数えます
マニュアルでは、事業場は原則として工場・事務所・店舗など同じ場所にあるものを1つと考え、同じ会社でも場所が分かれていれば別の事業場になる、とされています。
たとえば本社に40人、離れた営業所に15人いる会社は、会社全体では55人でも、事業場で見るとどちらも50人未満です。
2028年4月からは、どちらの事業場も実施の義務があります。違いが出るのは、労働基準監督署への報告です。マニュアルには「労働者数50人未満の事業場は不要です」とあります。
ここで1つ注意があります。報告が要るかどうかを決める「常時使用している労働者が50人以上」は、検査の対象者とは数え方が違います。短時間のパートやアルバイト、受け入れている派遣労働者も、継続して使用していれば人数に含めます。 検査の対象者が50人未満でも、報告が必要になる場合があると書かれています。
対象になる従業員は、健康診断と同じです
検査の対象は「常時使用する労働者」です。マニュアルでは、一般定期健康診断の対象者と同じとされています。
- 期間の定めのない契約の人(1年以上の契約、更新で1年以上使う予定の人、1年以上続けて使っている人を含む)
- 週の労働時間が、同じ業務をする通常の労働者の4分の3以上の人
4分の3未満でも、おおむね2分の1以上働く人には実施が望ましいとされています。派遣労働者は、派遣元に実施の義務があります。
健康診断と違うのは、労働者に受ける義務がないことです。会社は検査の機会を用意する義務があり、受けるかどうかは本人が決めます。
社長は労働者ではないので、対象に入りません。健康診断の記事で書いたのと同じ構造です。
個人事業主も、人を雇っていれば対象です
労働安全衛生法 第2条は、「事業者」を「事業を行う者で、労働者を使用するもの」と定めています。法人か個人かは問いません。
従業員を雇っている個人事業主は、この法律の「事業者」です。 2028年4月からは、法人の小さな会社と同じようにストレスチェックの義務がかかります。従業員を雇っていない一人親方やフリーランスは、労働者を使用していないので対象になりません。
会社がやることの流れ
マニュアルとスタートガイドに沿って並べると、こうなります。
- 事業者が、制度を始める方針を示す
- 実施の体制や方法について、労働者の意見を聴き、社内ルールを作って周知する
- 委託先の外部機関との連絡を担当する「実務担当者」を決める(衛生推進者・安全衛生推進者が望ましい)
- 委託先を選ぶ。外部機関に「サービス内容事前説明書」を出してもらい、内容と料金を比べる
- 委託先から調査票(紙かウェブ)を配り、各自が回答する。国が推奨するのは57項目版
- 結果は委託先から本人に直接届く
- 高ストレスで面接指導が必要とされた人から申出があれば、医師に面接指導を頼み、意見を聴いて、必要なら仕事の配慮をする
- 面接指導の結果の記録は、会社で5年間保存する
マニュアルは、労働者のプライバシーを守る観点から、原則として外部委託での実施を推奨しています。検査をする「実施者」は、医師・保健師、一定の研修を受けた歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師から選ぶ必要があります。社内の人が気軽に引き受けられる役ではありません。
集団分析(職場ごとの集計)は努力義務です。小さい会社に関係するのは、集団の単位が10人を下回る場合、個人が特定されるおそれがあるので、原則として集団分析の結果を受け取ってはいけない、という点です。
会社が見てはいけないもの
個人のストレスチェック結果は、本人の同意がなければ会社は受け取れません。 マニュアルでは、受け取れるものと受け取れないものがこう整理されています。
| 情報 | 会社が受け取るには |
|---|---|
| 個人のストレスチェック結果 | 本人の事前の同意が必要 |
| 面接指導の申出があったかどうか | 同意なく受け取れる(法令にもとづくため) |
| 面接指導の結果 | 同意なく受け取れる |
| 面接指導の結果について医師から聴いた意見 | 同意なく受け取れる |
同意があって受け取った場合でも、社内で共有する範囲は必要最小限に止めるとされています。
あわせて、不利益な取扱いも禁止されています。面接指導を申し出たことや、検査の結果だけを理由にした不利益な取扱いは、法律で禁止されています。検査を受けないこと、結果の提供に同意しないこと、面接指導を申し出ないことを理由にした不利益な取扱いも、指針で禁止の対象に挙がっています。
人数が少ない会社ほど、誰が面接指導を受けたかは周りに分かりやすくなります。社内ルールを作る段階で、ここを決めておく必要があると思いました。
費用は会社持ちです。ただし無料の窓口があります
面接指導の費用について、マニュアルには「事業者が負担すべきもの」とあり、保険診療の扱いはできないとされています。検査本体の委託料は、外部機関との契約で決まります。マニュアルには、料金がどこまで標準でどこからが追加料金かを確かめるチェックポイントが載っています。
医師の面接指導は、地域産業保健センター(地さんぽ)に頼めば無料で受けられます。 地さんぽは、厚生労働省所管の労働者健康安全機構が運営していて、おおむね労働基準監督署ごとに全国350か所あります。ただし、地さんぽはストレスチェックそのものは実施していません。検査は外部機関、面接指導は地さんぽ、という分け方になります。
ほかに無料で使えるものは次のとおりです。
- 都道府県の産業保健総合支援センター:社労士・心理職・保健師などによる研修、相談、事業場への訪問による導入支援
- ストレスチェック制度サポートダイヤル(0570-031050、平日10時〜17時):導入や実施の相談
- こころの耳:小規模事業場向けの情報と、労働者が使える無料の相談窓口
国の助成金は、会社が直接申請する形のものは見当たりませんでした。あるのは団体経由産業保健活動推進助成金で、事業主団体や労災保険の特別加入団体が、傘下の中小企業に産業保健サービスを提供する費用の90%を助成するものです。令和8年度版の案内では、50人未満の事業場向けの「ストレスチェックの実施及び集団分析」が対象に入っていて、上限は60万円(一定の要件を満たす団体は120万円)です。
ただし労働者健康安全機構のページによると、令和8年度分は予算の上限に達し、2026年7月10日で受付を終えています。
今から準備しておくこと
施行まで、あと1年半です。佐賀労働局の資料も、50人未満の事業者は1年6か月の間に実施体制の整備などの準備をする必要がある、と書いています。
- 事業場ごとに、常時使用する労働者を数える(検査の対象者と、報告の要否を決める人数は別に数える)
- 対象者のリストを作る。健康診断の対象者と同じなので、健診の名簿が使える
- 委託先の外部機関を探し、サービス内容事前説明書で料金を比べる
- 最寄りの地域産業保健センターの場所と、面接指導の申込方法を確かめる
- 社内ルールを作る。厚生労働省のページに規程のモデル例がある
- 加入している業界団体などが、団体経由の助成金を使う予定があるか聞いてみる
まとめ
- 50人未満の事業場のストレスチェックは、2028年(令和10年)4月1日から義務になる。2026年6月10日公布の政令第195号で決まった
- 内容は年1回の検査と、高ストレス者から申出があったときの医師の面接指導。集団分析は努力義務のまま
- 50人は会社ではなく事業場で数える。50人未満の事業場は労働基準監督署への報告が不要
- 報告の要否を決める人数には、短時間のパートや派遣労働者も含まれる
- 対象者は健康診断と同じ「常時使用する労働者」。社長は対象外で、労働者に受ける義務はない
- 従業員を雇っている個人事業主も対象になる
- 個人の結果は本人の同意なしに会社は受け取れない。検査や面接指導を理由にした不利益な取扱いは禁止
- 検査は外部委託が原則推奨。面接指導は地域産業保健センターで無料。団体経由の助成金は令和8年度分の受付が終わっている
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この記事について
本記事は執筆時点(2026年10月)に、厚生労働省のストレスチェック制度のページ、厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(令和8年2月)、佐賀労働局の発表資料(令和8年9月30日、スタートガイド・リーフレットを含む)、こころの耳、e-Gov法令検索の労働安全衛生法、団体経由産業保健活動推進助成金の案内(令和8年度版)、労働者健康安全機構の助成金のページにもとづいて書いています。
筆者は社会保険労務士・産業医ではありません。施行に向けて、省令や指針、マニュアルが改定されることがあります。事業場の分け方や「常時使用する労働者」に当たるかどうかは、働き方の実態によって個別に判断されます。助成金の内容や受付状況は年度ごとに変わります。
自社の対象範囲や実施方法については、必ず所轄の労働基準監督署、産業保健総合支援センター、社会保険労務士等にご確認ください。 本記事は一般的な情報提供であり、個別の判断を示すものではありません。