算定基礎届の記事で、支払基礎日数の話をしたときに「特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日以上」と書きました。そこは用語のまま流していました。

調べたら、この「特定適用事業所」に当たるかどうかで、パートの方が社会保険に入るかどうかが変わる話でした。

⚠️ そして来月、要件が1つ消えます。

特定適用事業所とは何か

日本年金機構の説明です。

特定適用事業所とは、1年のうち6月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業等のことです

51人以上です。⚠️ ただし数え方に注意が要ります。

法人事業所の場合は、同一法人格に属する(法人番号が同一である)すべての適用事業所の被保険者数の総数
個人事業所の場合は、適用事業所単位の被保険者数

🚩 法人は「会社全体」で数えます。事業所ごとではありません。 支店や工場が分かれていても、法人番号が同じなら合計です。

⚠️ そして「短時間労働者は含まない」——つまりすでにパートで入っている人は、この51人にはカウントしません。

🚩 令和9年10月から、36人以上になります

特定適用事業所に該当する適用事業所の範囲は段階的に拡大され、令和9年10月から、厚生年金保険の被保険者数が36人以上の企業等で働く短時間労働者は、健康保険・厚生年金保険の加入対象となります

51人 → 36人です。

これまでの経緯を見ると、方向ははっきりしています。 平成28年10月に501人以上で始まり、101人以上、51人以上と下がってきて、次が36人以上。⚠️ 「うちはまだ関係ない」と思っている会社が、順番に入ってくる仕組みです。

対象になる人の要件は3つ

特定適用事業所に勤務する方のうち、通常の労働者の4分の3未満で、次の3つすべてに当てはまる方です。

(1)週の所定労働時間が20時間以上であること
(2)学生でないこと
(3)所定内賃金が月額8.8万円以上であること

⚠️ **(1)は「所定労働時間」**です。就業規則や雇用契約書で定めた時間であって、実際に働いた時間ではありません。

⚠️ (3)の8.8万円には、入らないものがあります。

ただし、以下の賃金は除きます

  • 臨時に支払われる賃金および1月を超える期間ごとに支払われる賃金(例:結婚手当、賞与等)
  • 時間外労働、休日労働および深夜労働に対して支払われる賃金(例:割増賃金等)
  • 最低賃金法で算入しないことを定める賃金(例:精皆勤手当、通勤手当、家族手当

🚩 残業代も、通勤手当も、賞与も入りません。 **「実際にもらっている額」ではなく「所定内賃金」**で判定します。

⚠️ 来月、(3)が消えます

公式にこう書かれています。

最低賃金以上で週20時間以上働く場合は、所定内賃金が月額8.8万円以上となるため、この要件は令和8年10月に撤廃予定です。

⚠️ 令和8年10月=2026年10月。来月です。

理由も書いてあるとおりで、最低賃金が上がったので、週20時間働けば自動的に8.8万円を超えるからです。要件として機能しなくなったので外す、ということになります。

実務的には、判定が1つ減ります。 週20時間以上か、学生でないか——この2つになります。

51人未満でも、入れる制度があります

任意特定適用事業所というものがあります。

厚生年金保険の被保険者数が特定適用事業所の基準に満たない企業等であっても、被保険者の同意に基づく事業主の申し出により、短時間労働者を加入対象とする事業所になることができます

⚠️ 「被保険者の同意」が要ります。 会社が単独で決められるものではありません。

⚠️ そして、なった場合は全員です。

任意特定適用事業所となった場合、加入要件に該当するすべての短時間労働者が加入対象となります

一部の人だけ、はできません。

会社から見ると、どういう話か

社会保険料は労使折半なので、⚠️ 対象になる人が増えれば、会社の負担が増えます。

ただ、これは「負担が増える」だけの話ではないと思いました。

  • 働く側から見ると、厚生年金に入るので将来の年金が増え、傷病手当金なども対象になります
  • ⚠️ 一方で、手取りは減ります
  • だから「入りたくないので時間を減らす」という調整が起きます

⚠️ 算定基礎届の記事で「保険料を下げるために残業を抑えるのは本末転倒」と書きましたが、ここも同じ構造です。会社が勝手に決められることではなく、働く側の希望と噛み合わせる話になります。

私がやること

⚠️ 確認は2つです。

  1. うちの厚生年金の被保険者数が、法人全体で何人か(⚠️ 事業所ごとではなく合計。短時間労働者は含めない
  2. 令和9年10月の36人以上に、当たるかどうか

⚠️ 2番が本題です。 51人では関係なくても、36人なら関係する会社は多いはずです。そして**「1年のうち6月間以上、見込まれる」**という判定なので、人数が行ったり来たりしている会社ほど、先に見ておく必要があります。

まとめ

  • 特定適用事業所は、厚生年金の被保険者総数が51人以上(1年のうち6月間以上見込まれる)
  • 🚩 ⚠️ 法人は同一法人番号のすべての事業所の合計。事業所ごとではない
  • ⚠️ 短時間労働者はこの人数に含めない
  • 🚩 令和9年10月から36人以上に拡大
  • 対象者の要件は、4分の3未満で①週20時間以上②学生でない③所定内賃金月8.8万円以上
  • ⚠️ 8.8万円に残業代・通勤手当・賞与は入らない
  • 🚩 ⚠️ ③は令和8年(2026年)10月に撤廃予定
  • 51人未満でも「任意特定適用事業所」になれるが、被保険者の同意が必要で、対象者は全員

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この記事について

本記事は執筆時点(2026年9月)に日本年金機構が公表している資料(2026年4月17日更新)にもとづいて書いています。筆者は社会保険労務士ではありません。

⚠️ 令和8年10月の賃金要件の撤廃、令和9年10月の企業規模要件の引下げは、いずれも本記事の執筆時点で「予定」として公表されているものです。 施行までに内容が変わる可能性があります。

自社が特定適用事業所に当たるか、個々の方が加入対象になるかの判定については、必ず管轄の年金事務所または社会保険労務士にご確認ください。 本記事は一般的な情報提供であり、個別の判断を示すものではありません。