1月は、会社の提出物が重なる月です。給与支払報告書、法定調書、そして償却資産の申告。
償却資産の申告は、市区町村に出す固定資産税の申告です。土地や建物の固定資産税は役所が調べて通知してきますが、機械や備品は役所からは見えません。だから、持っている側が毎年申告します。
少額の資産の記事を書いたときに少し触れましたが、申告そのものの決まりを、今回は地方税法の条文と自治体の案内で確かめました。
先に答えを書きます
| 調べたこと | 分かったこと |
|---|---|
| 誰が出すか | 1月1日に償却資産を持っている会社・個人事業主 |
| いつまでに | 1月31日まで(土日なら次の平日) |
| 何を出すか | 機械、工具・器具・備品、構築物など。自動車とソフトウェアは対象外 |
| 赤字の会社は | 出す。法人税の赤字とは関係がない |
| 150万円未満なら | 課税されない(免税点)。ただし多くの自治体は申告を求めている |
| 出さないと | 条例で10万円以下の過料の可能性。さかのぼって課税されるのは最長5年 |
赤字でも、免税点に届かなくても、申告書は出すものだと考えておくのが安全です。
そもそも償却資産とは
東京都主税局の案内では、申告の対象になるのは、事業に使っている次のような資産です。
- 構築物(舗装、門、塀、看板など)
- 機械及び装置
- 船舶、航空機
- 車両及び運搬具(自動車税・軽自動車税がかかるものは除く)
- 工具、器具及び備品(パソコン、エアコン、応接セットなど)
使っていない資産や、休んでいる設備も対象です。
逆に、対象にならないものもあります。
| 対象外のもの | 理由 |
|---|---|
| 自動車、軽自動車 | 自動車税・軽自動車税がかかるため |
| ソフトウェア、特許権など | 形のない資産(無形固定資産)のため |
| 建物 | 家屋として別に課税されるため |
| 10万円未満で一度に経費にしたもの | 少額資産として除かれる |
| 20万円未満で3年の一括償却にしたもの | 同上 |
注意したいのは、40万円未満(2026年3月31日までに取得したものは30万円未満)の中小企業者の特例で一度に経費にしたものです。法人税では全額を経費にしていても、償却資産の申告では対象になります。 東京都の案内にもはっきり書かれています。
赤字の会社も出す
法人税は利益にかかるので、赤字なら払いません。でも固定資産税は、資産を持っていることにかかる税金です。
東京都の案内でも、赤字の事業者でも、償却資産を持っていれば申告が必要とされています。法人税の申告とは別の話です。
資産がない場合も、自治体によっては「該当資産なし」と書いて出すよう求めています。東京都は、申告書の備考欄にそう書いて出すよう案内しています。申告書が届いたら、資産がなくても返すものだと思っておくと間違いがありません。
150万円未満なら、税金はかからない
固定資産税には、免税点という仕組みがあります。地方税法第351条では、償却資産の課税標準となる額が150万円に満たない場合は、固定資産税を課することができないとされています。
ここでいう150万円は、買った値段の合計ではありません。毎年少しずつ下がっていく「評価額」をもとにした額です。同じ市区町村の中にある資産を合計して判定します。
税率は1.4%が標準です。150万円を超えると、超えた分ではなく全体に1.4%がかかります。たとえば課税標準額が200万円なら、2万8,000円です。
では、150万円未満なら申告しなくていいのか。
地方税法第383条では、申告するのは「固定資産税の納税義務がある償却資産の所有者」と書かれています。条文だけを読むと、免税点未満なら出さなくていいようにも読めます。
ただ、役所の側は、申告書を見ないと150万円を超えているかどうか分かりません。東京都をはじめ多くの自治体が、免税点未満でも申告するよう求めています。 自分で「たぶん150万円未満」と判断して出さないより、出して役所に判定してもらうほうが確実です。
評価額は、毎年どれくらい下がるのか
東京都の案内では、評価額はこう計算されます。
- 前の年に買った資産:取得価額 ×(1 − 減価率の半分)
- それより前に買った資産:前の年の評価額 ×(1 − 減価率)
- ただし、取得価額の5%より下にはならない
減価率は、耐用年数ごとに決まっています。耐用年数10年の資産なら0.206です。
100万円の機械(耐用年数10年)を去年買ったとすると、最初の評価額は100万円 ×(1 − 0.103)=89万7,000円になります。次の年はそこから0.206ずつ減っていきます。
最後は5%で止まるので、古い機械も、使っている限りは評価額が残ります。 長く使う設備が多い会社ほど、150万円の線を超えやすくなります。
出さないと、どうなるか
地方税法第386条には、正当な理由なく申告しなかった場合に、市町村は条例で10万円以下の過料を科す規定を設けることができる、と書かれています。うその申告をした場合は、第385条でもっと重い罰則があります。
もう一つは、さかのぼっての課税です。地方税法第17条の5では、固定資産税の賦課決定ができるのは、法定納期限の翌日から5年までとされています。
申告漏れが後で見つかると、最長5年分の固定資産税をまとめて払うことになりえます。1年分は小さくても、5年分を一度に払うのは重い負担です。
申告のしかた
申告書は、前の年に申告した事業者には、12月ごろに市区町村から届くのが一般的です。出し方は3つあります。
- 紙の申告書を郵送するか、窓口に持っていく
- eLTAX(地方税のポータルシステム)で電子申告する
- 会計ソフトや税理士の申告ソフトから作る
東京都の案内では、eLTAXを使うには電子証明書を用意して、利用の届出をする必要があります。法人住民税などですでにeLTAXを使っている場合は、提出先に都税事務所(固定資産税)を追加すれば使えます。
前の年から資産が増えていなくても、毎年1月1日時点の内容で出します。減ったものは「減少資産」として申告します。売った、捨てた、という資産を申告から外さないと、ないものに税金がかかり続けます。
私が確認すること
少額の資産の記事で、「うちの償却資産が150万円のどちら側にあるか知らない」と書きました。今回調べて、確認することが増えました。
- 毎年、申告書を出しているか(誰が作っているか)
- 中小企業者の特例で経費にした資産が、申告に入っているか
- 売った・捨てた資産が、申告から外れているか
1番は、会計事務所が出しているのか、会社で出しているのかを確かめます。2番と3番は、法人税の申告と償却資産の申告で、同じ資産の扱いがずれていないかという話です。
税理士に頼んでいる場合でも、償却資産の申告は顧問契約の範囲に入っていないことがあります。法人税の申告とは提出先も期限も違うからです。
顧問税理士がいない、または償却資産まで見てもらえていない場合は、1月に入る前に相談先を決めておくと安心です。
まとめ
- 償却資産の申告は、1月1日に持っている資産について、1月31日までに市区町村に出す
- 対象は機械、工具・器具・備品、構築物など。自動車とソフトウェアは対象外
- 10万円未満で一度に経費にしたもの、20万円未満の一括償却は対象外。40万円未満の中小企業者の特例で経費にしたものは対象
- 赤字でも申告する。固定資産税は利益ではなく資産にかかる
- 課税標準額150万円未満は課税されない。ただし多くの自治体は申告を求めている
- 評価額は毎年下がるが、取得価額の5%で止まる
- 申告しないと条例で10万円以下の過料の可能性。さかのぼって課税されるのは最長5年
- 売った・捨てた資産は減少資産として申告する
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この記事について
本記事は執筆時点(2026年11月)の地方税法(第17条の5、第351条、第383条、第385条、第386条)と、東京都主税局「償却資産(固定資産税)」の案内にもとづいて書いています。筆者は税理士ではありません。
償却資産の固定資産税は市町村税です(東京23区は都税)。申告書の様式、提出先、免税点未満の場合の取り扱い、過料の運用などは、自治体によって異なります。税率も、標準の1.4%と異なる自治体があります。
自社の償却資産の申告については、必ず資産のある市区町村の固定資産税の担当課、または顧問税理士にご確認ください。 本記事は一般的な情報提供であり、個別の判断を示すものではありません。
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