1月31日は、会社が年に1度まとめて書類を出す日です。 給与の源泉徴収票、市区町村への給与支払報告書、そして「支払調書」。
この時期になると、**「一人親方に払った外注費も、支払調書を出さないといけないのか」**という疑問が出てきます。外注先に個人がいる会社なら、一度は引っかかるところだと思います。
国税庁の資料で調べたら、答えははっきりしていました。工事の請負代金は、支払調書(報酬・料金等)の対象に入っていません。 ⚠️ 対象になるのは、むしろ設計料や測量費のほうでした。
先に答えを書きます
| 誰に何を払ったか | 源泉徴収 | 支払調書(報酬・料金等) |
|---|---|---|
| 一人親方(大工・左官・とびなど)に工事代金 | 不要 | 対象外 |
| 個人の建築士に設計料・工事監理料 | ⚠️ 必要(10.21%) | ⚠️ 年5万円超なら提出 |
| 個人の測量士に測量費 | ⚠️ 必要(10.21%) | ⚠️ 年5万円超なら提出 |
| 個人の司法書士・土地家屋調査士に報酬 | ⚠️ 必要(1回1万円を引いてから10.21%) | ⚠️ 年5万円超なら提出 |
| 法人(設計事務所・測量会社など)に払った | 不要 | 対象外 |
分かれ目は「工事か、資格の仕事か」と「相手が個人か、法人か」の2つです。
支払調書が要るのは「源泉徴収する報酬」だけです
国税庁のタックスアンサー No.7431では、支払調書を出す人をこう書いています。
外交員報酬、税理士報酬など所得税法第204条第1項各号ならびに所得税法第174条第10号および租税特別措置法第41条の20に規定されている報酬、料金、契約金および賞金の支払をする方
つまり、支払調書は「所得税法204条に書かれた報酬を払った人」が出すものです。 そして204条に書かれているのは、源泉徴収が必要な報酬・料金の一覧と同じものです。原稿料・講演料、弁護士・税理士などの資格者への報酬、外交員報酬、芸能やスポーツの報酬などです。
🚩 この一覧に、建設工事の請負代金は入っていません。 大工・左官・とび・鍛冶などの一人親方に工事を出して払った代金は、源泉徴収もしないし、報酬・料金等の支払調書も出さない、ということになります。
提出期限は翌年の1月31日、金額の基準は弁護士・税理士などへの報酬や原稿料なら同じ人への年間の支払いが5万円を超えるものです。
建設の会社で引っかかるのは、設計料のほうでした
調べていて意外だったのはこちらです。建築士の業務は、源泉徴収の対象の一覧にはっきり入っています。
国税庁の「源泉徴収のあらまし」では、建築士の業務に関する報酬として次のものが挙がっています。
- 建築物の設計、工事監理を行ったことに対する報酬
- 建築工事の指導監督を行ったことに対する報酬
- 建築工事契約に関する事務を行ったことに対する報酬
- 建築物に関する調査・鑑定を行ったことに対する報酬
- 建築に関する法令・条例の手続の代理を行ったことに対する報酬
税額は支払額の10.21%、1回の支払いが**100万円を超える部分は20.42%**です。
⚠️ 建築士事務所の登録をしていない建築士も含まれます。 また、本人は資格を持っていない個人の建築業者でも、建築士の資格を持つ人を雇っていて、その人が設計をしたなら、その業者に払う設計料も対象とされています。
⚠️ 設計と施工をまとめて1つの個人に頼んだ場合は、代金を「設計の部分」と「工事の部分」に分けて、設計の部分だけ源泉徴収するのが建前です。設計の部分がごく少額なら、源泉徴収しなくて差し支えない、とされています。
**同じ並びで、測量士・測量士補への測量の報酬も10.21%、司法書士と土地家屋調査士は「1回の支払額から1万円を引いた額」の10.21%**です。境界の確認や登記を個人の事務所に頼んだときが当てはまります。
相手が法人なら、どれも源泉徴収しません
源泉徴収のあらましの見出しは「居住者に支払う報酬・料金等に対する源泉徴収」です。居住者とは個人のことなので、設計事務所や測量会社が法人なら、設計料でも源泉徴収はしません。
請求書の宛名欄ではなく、相手の名前を見ます。「〇〇設計事務所」でも個人事業なら対象、「株式会社〇〇設計」なら対象外です。
払う側が一人親方なら、そもそも源泉徴収しません
ここは、一人親方や従業員のいない個人事業主の側に関係します。
国税庁のタックスアンサー No.2502と源泉徴収のあらましには、こうあります。報酬を払うのが個人で、その人が給与を払っていない(または常時2人以下の家事使用人にだけ給与を払っている)場合は、源泉徴収をする必要がありません(ホステス等への報酬だけは例外)。
🚩 従業員を雇っていない一人親方が建築士に設計を頼んでも、源泉徴収はしなくていい、ということです。1人でも従業員に給与を払っている個人事業主は、源泉徴収義務者になるので、ここで扱いが分かれます。
一人親方の側から見ると
元請から支払調書が届かないのは、普通のことです。 工事の請負代金はそもそも対象外なので、届かないからといって、元請が何かを忘れているわけではありません。
⚠️ 裏返すと、自分の売上は自分で集計するしかない、ということです。確定申告のときに「元請から届いた書類を足せば売上になる」とはいきません。通帳の入金と請求書の控えから、自分で1年分を数えることになります。
支払調書の話とは別に、気をつけること
「一人親方への外注費は源泉徴収しない」のは、それが本当に請負である場合の話です。 実態が雇用に近いと、税務署から外注費ではなく給与だと判断されることがあります。そうなると源泉徴収の対象になり、消費税の計算も変わります。
この判断の基準は外注費が「給与」と認定されるリスクの記事にまとめています。支払調書が要らないことと、外注費として認められることは別の話です。
給与のほうは、今度の1月から1か所で済みます
1月31日のもう1つの提出物、給与の源泉徴収票にも変更があります。
国税庁のタックスアンサー No.7411によると、
令和9年1月1日以後に市区町村に「給与支払報告書」を提出した場合には、「給与所得の源泉徴収票」を税務署に提出したものとみなされます。
🚩 2027年1月に出すもの(2026年分)から、市区町村に給与支払報告書を出せば、税務署への源泉徴収票は出さなくてよくなります。 これまでは同じ内容を、税務署向けと市区町村向けに分けて出していました。
あわせて、給与支払報告書の提出範囲と源泉徴収票の提出範囲がそろいます。 対象は、年の途中で退職した人で年間の支払いが30万円以下の場合を除く、すべての給与です。
⚠️ 支払調書(報酬・料金等)は、この変更の対象ではありません。 設計料などの支払調書は、これまでどおり税務署に出します。
まとめ
- 支払調書(報酬・料金等)が要るのは、源泉徴収の対象になる報酬を払ったときだけ
- 🚩 一人親方(大工・左官・とびなど)に払った工事代金は、源泉徴収も支払調書も対象外
- ⚠️ 個人の建築士への設計料・工事監理料、測量士への測量費は源泉徴収の対象(10.21%)。年5万円を超えたら支払調書も出す
- 相手が法人なら、設計料でも源泉徴収しない
- 従業員のいない個人事業主が払うときは、そもそも源泉徴収しなくていい
- 一人親方には支払調書が届かないので、売上は自分で集計する
- 🚩 2027年1月から、給与は市区町村に給与支払報告書を出せば税務署への源泉徴収票が不要になる
あわせて読みたい
- 外注費が「給与」と認定されるリスクと、10月から変わるインボイスの控除
- 源泉所得税の納期の特例を使っていません|毎月払うほうが楽だと思っています
- 12月は賞与より「賞与の後」の支払いが重なります|1月20日の源泉と1月末の社会保険料
- 2026年12月の年末調整で控除が変わります|社長に効くのは4万円、従業員には最大36万円でした
この記事について
本記事は執筆時点(2026年10月)に国税庁が公表しているタックスアンサー(No.7431:支払調書、No.2792:源泉徴収が必要な報酬・料金、No.2502:源泉徴収義務者、No.7411:給与所得の源泉徴収票)と、国税庁「源泉徴収のあらまし」(第5 報酬・料金等の源泉徴収事務)にもとづいて書いています。筆者は税理士ではありません。
⚠️ 外注先との取引が請負か雇用かは、契約書の名目ではなく実態で判断されます。 設計と施工を一括で発注した場合の区分、資格者を雇用している業者への支払いの扱いなど、個別の判断が必要な場面があります。
自社の源泉徴収や法定調書の提出については、必ず顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。 本記事は一般的な情報提供であり、個別の判断を示すものではありません。