12月が終わると、その年の売上が確定します。1年分を足してみて、1,000万円を超えていた。そのとき気になるのが、消費税をいつから納めることになるのか、です。
国税庁の資料で順番に確認しました。答えは「来年から」ではなく、原則として「再来年から」でした。 ただし、1年早まる場合と、売上に関係なく納める場合があります。
先に答えを書きます
| どんな場合か | 消費税を納めるのは |
|---|---|
| 個人で、ある年の課税売上高が1,000万円を超えた | その2年後の年から(基準期間) |
| 法人で、ある事業年度の課税売上高が1,000万円を超えた | その2つ後の事業年度から(基準期間) |
| 前年1月〜6月の課税売上高が1,000万円を超えた | その翌年から。ただし給与等の支払額で判定することもできる(特定期間) |
| インボイス発行事業者の登録をしている | 売上の額に関係なく、登録日から |
| 資本金1,000万円以上で法人を作った | 設立1期目から |
課税事業者になると決まったら、「消費税課税事業者届出書」を速やかに出します。
判定に使うのは「2年前」の売上です
国税庁のタックスアンサー No.6501には、こう書かれています。
その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合には、原則として、納税義務が免除されます。
この「基準期間」が何年前を指すかも、同じページにあります。
個人事業者の場合はその年の前々年、事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度
今年の消費税を納めるかどうかは、今年の売上ではなく、2年前の売上で決まります。 今年いくら売れたかは、今年の納税には関係しません。
逆から見ると、2026年の売上が1,000万円を超えたなら、それが効いてくるのは2028年です。12月に1年の売上が確定した時点で、2年後の話が1つ決まる、ということになります。
前年の1〜6月で、1年早まることがあります
もう1つの判定があります。「特定期間」です。
No.6501によると、特定期間は、個人事業者なら前年の1月1日から6月30日まで、法人なら原則として前事業年度の開始から6か月間です。この期間の課税売上高が1,000万円を超えると、基準期間が1,000万円以下でも課税事業者になります。
ただし、ここには選択肢があります。
特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額により判定することができます。
売上が1,000万円を超えていても、給与等の支払額が1,000万円以下なら、そちらで判定して免税事業者のままでいられます。 従業員を雇っていない一人親方やフリーランスなら、給与等の支払額はほとんどないはずです。どちらで判定するかは、事業者が選べます。
半年で1,000万円を超えるのは、年の前半に大きな仕事が集中した場合です。その年が初めての大きな年なら、特定期間のほうが先に効いてくる可能性があります。
1,000万円は税抜か、税込か
これは、2年前の自分が免税事業者だったかどうかで変わります。
まず原則です。消費税法基本通達1-4-2では、基準期間の課税売上高に消費税額等は含まないとしています。課税事業者だった年の売上は、税抜で数えます。
一方、免税事業者だった年は違います。国税庁の質疑応答事例は、こう答えています。
基準期間となる課税期間において免税事業者となっていたことから、その売上げには消費税は含まれていないこととなります
その年に受け取った金額が、そのまま基準期間の課税売上高になります(基本通達1-4-5)。
| 2年前の自分 | 1,000万円と比べる金額 |
|---|---|
| 課税事業者だった | 税抜の売上 |
| 免税事業者だった | 受け取った金額そのまま(税抜に直さない) |
免税事業者が「税込で1,050万円だから、税抜にすれば954万円」と計算するのは誤りです。免税事業者のまま請求書に消費税相当額を乗せていても、受け取った総額で判定します。
2026年の売上が1,100万円だったら
個人事業主で、2025年までは売上が1,000万円以下、インボイス登録はしていない。2026年の売上(受け取った総額)が1,100万円になった、という例で並べます。
| 年 | 基準期間 | どうなるか |
|---|---|---|
| 2026年 | 2024年 | 免税。12月31日に売上1,100万円が確定 |
| 2027年 | 2025年 | 2025年が1,000万円以下なら、原則は免税。ただし2026年1〜6月の売上と給与等の支払額がどちらも1,000万円超なら課税 |
| 2028年 | 2026年 | 課税事業者。1年分の消費税を申告・納付する |
| 2029年 | 2027年 | 2027年の売上で決まる。1,000万円以下なら免税に戻る |
2026年の売上が確定した時点で、2028年に課税事業者になることが決まります。
2028年の消費税は、2028年の売上にかかります。 2026年の売上にさかのぼってかかるわけではありません。2028年の売上を伸ばすなら、その分の消費税を見込んだ値決めを、2027年のうちに考えておくことになります。
2028年から簡易課税を使いたい場合は、No.6629にあるとおり、「消費税簡易課税制度選択届出書」を適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで、この例では2027年12月31日までに出す必要があります。
届出書は「速やかに」です
課税事業者になると決まったら、「消費税課税事業者届出書」を出します。No.6629では、基準期間で判定した場合は基準期間用、特定期間で判定した場合は特定期間用を使い分け、提出時期はどちらも「事由が生じた場合速やかに」とされています。
期限が日付で決まっていない分、後回しにしやすい書類です。 上の例なら、2026年の売上が締まった段階が出すタイミングになります。
その後、基準期間の売上が1,000万円以下に戻った場合は、「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」を、こちらも速やかに出します。
インボイス登録をしていれば、売上は関係ありません
ここまでの話は、インボイス登録をしていない事業者の話です。
No.6501には、はっきり書かれています。
適格請求書発行事業者の登録を受けている場合には、納税義務は免除されません。
登録している限り、売上が300万円でも課税事業者です。 1,000万円の判定は関係ありません。
登録をやめて免税事業者に戻りたい場合は、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を出します。期限は、免税に戻りたい課税期間の初日から起算して15日前の日までです(No.6629、基本通達1-4-1の2)。個人事業者なら、その年の1月1日から数えて15日前になります。年が明けてからでは間に合いません。
なお、課税事業者選択届出書を出して課税事業者になっている人は、登録の取消しの届出書に加えて、選択をやめる届出書も必要です(基本通達1-4-1の2の注)。
法人を作るときは、資本金に気をつけます
法人には、もう1つ別のルールがあります。
設立したばかりの法人には基準期間がないので、1期目と2期目は原則として免税です。ただし、タックスアンサー No.6503には、こうあります。
設立1期目または設立2期目のそれぞれの期首における資本金の額または出資の金額が1,000万円以上である場合には、その設立1期目または設立2期目は課税事業者となります。
資本金1,000万円以上で法人を作ると、売上がゼロでも1期目から課税事業者です。このほか、課税売上高5億円超の会社や個人に支配されている法人など(特定新規設立法人)も免税になりません。
個人事業主から法人にする場合は、資本金の額をいくらにするかで、消費税の扱いが変わります。
2割特例・3割特例との関係
インボイス登録をきっかけに課税事業者になった人には、納税額を軽くする特例があります。2割特例は令和8年9月30日を含む課税期間まで、個人事業者なら2026年分で終わります。その後、令和9年分・令和10年分は個人事業者だけ3割特例があります。
どちらも、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると使えません。上の例で、2026年の売上が1,100万円なら、2028年分は3割特例の対象外です。
各特例の期限と中身はインボイスの経過措置の記事に、3割特例と簡易課税の比べ方はこちらの記事にまとめています。
課税事業者になる年は、申告の計算も手間も変わります。顧問税理士がいない場合は、売上が締まるこの時期に探しておくと安心です。
まとめ
- 消費税を納めるかどうかは、今年ではなく基準期間(個人は前々年、法人は前々事業年度)の課税売上高で決まる
- 2026年の売上が1,000万円を超えたら、課税事業者になるのは原則2028年から
- 前年1〜6月の課税売上高が1,000万円を超えると1年早まる。ただし給与等の支払額で判定することもできる
- 基準期間に課税事業者だったなら税抜、免税事業者だったなら受け取った金額そのままで判定する
- 課税事業者になると決まったら、消費税課税事業者届出書を速やかに出す
- インボイス登録をしている事業者は、売上の額に関係なく課税事業者
- 登録をやめて免税に戻るには、その課税期間の初日から15日前の日までに届出書を出す
- 資本金1,000万円以上で設立した法人は、1期目から課税事業者
- 基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると、3割特例は使えない
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この記事について
本記事は執筆時点(2026年10月)に国税庁が公表しているタックスアンサー(No.6501:納税義務の免除、No.6503:基準期間がない法人の納税義務の免除の特例、No.6629:消費税の各種届出書)、消費税法基本通達 第1章第4節(1-4-1の2、1-4-2、1-4-5)、質疑応答事例「基準期間において免税事業者であった者の課税売上高の判定」、2割特例の案内ページにもとづいて書いています。筆者は税理士ではありません。
課税売上高には、非課税の売上や返品・値引きの扱いなど、細かい計算のルールがあります。また、相続や合併があった場合、高額な資産を取得した場合などは、本記事とは別の規定で課税事業者になることがあります。本記事の年表は、こうした事情がない場合の一般的な例です。
ご自身が課税事業者になる時期や届出の要否については、必ず顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。 本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務判断を示すものではありません。