外注費の記事で、免税事業者への支払いの控除が80%から70%に下がると書きました。
書いたあとで気になりました。では、他のものはいつ終わるのか。
調べたら、インボイスの経過措置は今も5つ動いていて、令和8年度の税制改正で全部が書き換わったばかりでした。しかも期限は制度ごとにバラバラです。
⚠️ そして、延長されたものと、来月から重くなるものが同時にあります。
残っている経過措置は5つです
| 経過措置 | 中身 | いつまで |
|---|---|---|
| 8割/7・5・3割控除 | 免税事業者等からの仕入れの一定割合を控除できる | 令和13年9月30日まで(割合は段階的に下がる) |
| 2割特例 | 登録を機に課税事業者になった人の納税を売上税額の2割に | 令和8年9月30日の属する課税期間まで |
| 3割特例 | 同じく、納税を売上税額の3割に。個人事業者だけ | 令和9年分・令和10年分 |
| 少額特例 | 1万円未満の取引はインボイス不要 | 令和11年9月30日まで |
| 登録の柔軟化 | 課税期間の途中から登録できる | 令和11年9月30日の属する課税期間まで |
「インボイスはもう始まったから終わり」ではありません。 ここから7年かけて、段階的に外していく設計になっています。
以下、近いものから書きます。
① 来月から、発注側の控除が70%に下がります
まず、支払う側(発注側)の話です。
免税事業者に支払っても、その消費税の一部は控除できます。その割合が下がります。
| 期間 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 〜令和8年9月30日 | 80% |
| 令和8年10月1日〜令和10年9月30日 | 70% |
| 令和10年10月1日〜令和12年9月30日 | 50% |
| 令和12年10月1日〜令和13年9月30日 | 30% |
| 令和13年10月1日〜 | なし |
ここは、いいニュースと悪いニュースが同時にあります。
⚠️ いいニュース——改正前は「50%を3年やって終わり」でした。それが2年延長され、30%の段階が足されたので、完全になくなるのが令和13年10月に後ろへ動きました。
⚠️ 悪いニュース——その次の段階(70%)が、来月から来ます。
⚠️ 「2026年10月1日から」ではありません。 正確には令和8年10月1日以後に「開始する課税期間」からなので、決算月によって時期がずれます。 そこは前の記事で決算月ごとの表にしました。
⚠️ ② 発注側に、新しい上限がつきました
これは見落としやすいところです。
7・5・3割控除には、金額の上限が新設されました。
一のインボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れの合計額(税込み)が、その年又は事業年度で**1億円(改正前:10億円)**を超える場合には、その超えた部分の課税仕入れについて適用できません。
10億円が1億円になりました。10分の1です。
⚠️ 読み方に注意が要ります。**「一の」**とあるので、免税事業者1社あたりの年間合計です。全社の合計ではありません。
それでも、1社に年1億円以上を支払っている場合は影響します。 ⚠️ こちらも令和8年10月1日以後に開始する課税期間からです。
③ 受注側は、2割特例が今年で終わります
ここからは**受け取る側(受注側)**の話です。
インボイス登録を機に免税事業者から課税事業者になった人は、納税額を売上税額の2割にできました。2割特例です。
これが令和8年9月30日の属する課税期間で終わります。
| 最後になるのは | |
|---|---|
| 個人事業者 | 令和8年分(2026年分) |
| 12月決算の法人 | 令和8年12月期 |
| 3月決算の法人 | 令和9年3月期 |
個人事業主・一人親方の方は、今年の申告が2割特例の最後ということになります。
④ そのあと、個人事業者だけ3割特例に引き継がれます
⚠️ ここが令和8年度税制改正の新しいところです。
3割特例が創設されました。納付税額を売上税額の3割にできる特例で、令和9年分・令和10年分が対象です。
主な要件はこの3つです。
- 個人事業者であること
- 基準期間(適用を受ける年の2年前)の課税売上高が1,000万円以下
- インボイス発行事業者の登録を受けていること
🚩 法人は使えません。 国税庁の資料にはっきり「法人は3割特例適用不可」と書かれています。2割特例は法人も使えましたが、3割特例は個人事業者だけです。
手続きは軽いです。 ⚠️ 事前の届出は要りません。 申告書の所定欄に、適用を受ける旨を書くだけです。仕入れの消費税額を実額で計算する必要もなく、インボイスの保存も要りません。
⚠️ ただし、誰でも3割特例が得というわけではありません。 国税庁自身が、こう書いています。
- **卸売業は90%、小売業や飲食料品を扱う農林水産業などは80%**の「みなし仕入率」が使えるので、簡易課税のほうが納税額が少なくなることがある
- 設備投資が多く、仕入れの消費税が売上の消費税を上回る年は、一般課税なら還付が出るが、3割特例では通常、還付は生じない
⚠️ ⑤ 簡易課税の届出期限が、緩くなりました
これも新しい話です。
簡易課税を使うには、**原則として「適用を受けたい課税期間が始まる前日まで」**に届出書を出す必要があります。年が明けてから「やっぱり簡易課税で」は効かない——これが原則です。
ここに例外ができました。
2割特例・3割特例の適用を受けた翌課税期間に簡易課税制度の適用を受けようとする場合は、その適用を受けようとする課税期間の申告期限までに届出書を提出することで、その課税期間から簡易課税制度の適用を受けることが可能
国税庁が挙げている例で言うと、令和11年に簡易課税を使いたい場合、本来は令和10年12月31日までに出す必要があります。それが令和12年4月1日(申告期限)まででよいことになります。
⚠️ 1年以上、判断を後ろ倒しにできるということです。1年やってみてから決められます。
⚠️ 例外があります。 2割特例の翌課税期間が令和8年9月30日以前に終了する課税期間である場合は、その課税期間の末日までです。
⑥ 少額特例と登録の柔軟化は、まだ先です
残る2つは、まだ時間があります。
少額特例は、1万円未満(税込)の取引ならインボイスの保存が要らないという措置です。基準期間の課税売上高が1億円以下などの要件を満たす事業者が対象で、令和11年9月30日までです。
登録の柔軟化は、免税事業者が課税期間の途中からでも登録を受けられる措置で、令和11年9月30日の属する課税期間までです。
この2つは、今すぐ動く話ではありません。 ただし、少額特例が終わると、1万円未満の経費もインボイスを揃える話になります。 そこは今から効率のいい形にしておくほうがいいと思います。
うちの場合、動くのは10月です
私は法人なので、3割特例は使えません。
うちに関係するのは①と②です。免税事業者への支払いの控除が70%に下がるのと、1社あたり1億円の上限。上限のほうは、1社にそこまで払っていないので実害はありません。
⚠️ ただ、これは自分だけの話ではありませんでした。
外注先が個人事業主なら、その人は今年で2割特例が終わり、来年から3割特例に移ります。 3割特例を知らないまま、簡易課税の届出期限だけが過ぎていくということが起こり得ます。
取引先の税金の面倒を見る義務はありません。 ですが、「来年から急に手取りが減った」と言われて値上げの相談になるくらいなら、先に知らせておくほうが早いとは思いました。
見落としやすいところ
まとめると、引っかかりやすいのはここでした。
| 日付ではなく課税期間 | 「10月1日から」ではなく「10月1日以後に開始する課税期間から」。決算月でずれる |
| 1億円は1社あたり | 全社の合計ではない |
| 3割特例は個人だけ | 法人は使えない |
| 届出は要る/要らないが混在 | 3割特例は届出不要、簡易課税は届出必要(ただし期限が緩和された) |
| 延びたのに重くなる | 制度の終了は2年延びたが、控除の割合は来月下がる |
⚠️ 自分がどれに当たるかは、決算月・売上規模・法人か個人かで変わります。 ここは調べても「自分の場合」が出てこないところなので、顧問税理士がいない方は、一度きちんと当てはめてもらったほうが早いと思います。届出の期限を逃すと、原則として1年待ちになるためです。
私は顧問税理士がいるので使っていませんが、顧問がいない個人事業主・ひとり法人の方であれば、相場を知る意味でも相談先を探せる場所があります。
まとめ
- 経過措置は5つ動いている。 全部が令和8年度税制改正で書き換わった
- 来月から、免税事業者への支払いの控除が80%→70%。 ただし「10月1日以後に開始する課税期間」から
- ⚠️ 7・5・3割控除に1社あたり年1億円の上限が新設(改正前は10億円)
- 経過措置の終了は2年延長され、完全になくなるのは令和13年10月
- 2割特例は令和8年9月30日の属する課税期間で終了。 個人事業者は今年の申告が最後
- ⚠️ 令和9年分・令和10年分は3割特例。個人事業者だけで、法人は使えない。届出も不要
- ⚠️ 簡易課税の届出期限が、申告期限まで緩和された。 1年やってから決められる
- 少額特例と登録の柔軟化は令和11年9月30日まで
あわせて読みたい
- 外注費が「給与」と認定されるリスクと、インボイスの控除
- 消費税の中間納付は前期の実績で決まる|仮決算という選択肢を知りませんでした
- 「記帳は自分でやっている」と思っていたら、請求書に記帳代行と書いてあった
- 電子帳簿保存法、小さな会社が実際にやってみて詰まったところ
この記事について
本記事は執筆時点(2026年8月)に国税庁が公表している令和8年度税制改正の資料にもとづいて書いています。筆者は税理士ではありません。
経過措置の適用可否や期限は、法人か個人事業者か、決算月、売上規模、登録の時期によって変わります。 また、3割特例と簡易課税のどちらが有利かは、業種と設備投資の状況によって逆転します。 ご自身の申告や届出の判断については、必ず顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。 本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務判断を示すものではありません。