今年、振込手数料をすべて自社負担に切り替えました。 法改正への対応です。

それまで、正直なところ振込手数料をあまり意識していませんでした。ところが自社で全部負担すると決めた瞬間、毎月出ていく固定費として、はっきり目に見えるようになりました。

そして気づきました。法人口座を選ぶ基準が、自分の中で変わっていたことに。

うちは法人口座を4つ持っています。その運用も含めて、今考えていることを整理しておきます。

2026年1月から「下請法」は「取適法」になった

まず前提の話です。

2026年1月1日、下請法が改正され、名称が**「中小受託取引適正化法(取適法)」**に変わりました。中身もいくつか変わっています。

主な内容はこうです。

  • 振込手数料を中小受託事業者に負担させることが禁止された
  • 手形払いが禁止された(電子記録債権やファクタリングも、支払期日までに現金を得ることが困難なものは禁止)
  • 価格協議の求めに応じない、必要な説明をしないなど、一方的に価格を決定する行為が禁止された

このうち、経理の実務に直接効いたのが振込手数料でした。

以前は「振込手数料は差し引いてお支払いします」という取扱いが普通にありました。改正後は、合意があるかどうかにかかわらず、代金から差し引くことが違法になります。

うちも対応しました。支払時に手数料を引かない。全部こちらで持つ。 それだけです。

「今まで払っていなかった費用」が、急に出てくる

対応そのものは簡単でした。差し引くのをやめるだけです。

ただ、その分がまるごと自社のコストになります。

考えてみれば当たり前なのですが、実際に自分で払う立場になって初めて重みが分かりました。

振込1件あたりの手数料 × 毎月の件数 × 12か月。

1件あたりは数百円です。しかし毎月の支払件数が増えれば、年間では無視できない額になります。しかもこれは、売上が増えても減っても発生する固定的なコストです。

「たかが振込手数料」ではなくなりました。

うちの法人口座は4つ

参考までに、今の状態を書いておきます。銀行名は伏せますが、業態としては次の4つです。

種別 用途
地方銀行 メイン。売上の入金、支払、融資
信用組合 取引・付き合いの関係
信用金庫 同上
ゆうちょ銀行 一部の入出金

メインは地方銀行です。ほとんどの取引はここを通しています。

なぜ4つもあるのか。理由は単純で、必要に応じて増えていったからです。

  • 取引先から指定される
  • 融資の関係で口座が必要になる
  • 地域の付き合いで作る

戦略的に選んだというより、事業を続けるうちに自然と増えたというのが実態です。中小企業では珍しくないと思います。

ネット銀行の法人口座は、まだ作っていません

正直に書きます。個人ではネット銀行を使っていますが、法人では作っていません。

理由はいくつかあります。

  • メインバンクとの関係。融資を受けている以上、取引の実績はそこに集約したい
  • 口座が増えると管理が増える。通帳、明細、記帳、残高確認。自分で経理をやっていると、この手間は無視できません
  • そもそも手数料を意識していなかった

3つ目が今回変わりました。手数料を自社で全部持つと決めた以上、安いところを使う理由ができました。

一般に、ネット銀行の振込手数料は、店舗を持つ銀行より安いとされています。件数が多い会社ほど、差は大きくなります。

それでも「全部ネット銀行に移す」にはならない

ここは正直に書いておきたいところです。

融資を受けている会社が、取引をネット銀行に移すのは現実的ではありません。

銀行は口座の入出金を見ています。売上がどこを通っているかは、融資の判断材料になります。手数料を数万円節約するために、融資の関係を弱くするのは本末転倒です。

だから現実的な形はこうなると思っています。

  • メインバンクは動かさない(融資・入金・主要な取引)
  • 支払件数の多い振込だけを、手数料の安い口座から出す

つまり全部移すのではなく、用途で分ける。これなら融資の関係を保ったまま、手数料だけ下げられます。

口座を増やすときに考えること

とはいえ、口座を増やせば管理も増えます。増やす前に確認しておきたいのは、この3点だと考えています。

  1. 振込手数料はいくらか。 同行宛と他行宛で違うので、自社の支払先の分布と照らす
  2. 月に何件振込があるか。 ここが少なければ、口座を増やす手間の方が大きい
  3. 口座維持手数料や、無料回数の条件はあるか

「安い」だけで決めると、条件を満たさず結局高くつくことがあります。自社の件数で計算してから判断すべきだと思っています。

⚠️ 私はまだネット銀行の法人口座を作っていないので、使ったうえで勧めているわけではありません。 ただ、比べる相手として数字を見ておく価値はあると思っています。

たとえばラクスルバンクは、GMOあおぞらネット銀行と提携した中小企業向けのサービス(2025年11月に正式リリース)です。他行宛ての振込手数料が1件119円、法人口座の開設は最短で申込当日とされています。

⚠️ 法人口座のサービスなので、次に書く個人事業主の屋号口座とは別の話です。⚠️ 口座開設にはGMOあおぞらネット銀行所定の審査があり、即日の開設にも条件があります。

繰り返しますが、手数料の差だけで決める話ではありません。 上に書いたとおり、融資を受けている会社がメインバンクを動かすのは合理的ではないと思っています。サブとして持つかどうか、そして上の3点を自社の件数で計算したうえで判断するものです。

ラクスルバンクの法人口座を見てみる

個人事業主は「屋号口座」の話になります

ここまで法人口座の話で書いてきましたが、取適法の適用も、振込手数料の負担も、個人事業主に無関係ではありません。

まず発注する側なら、個人事業主でも取適法の対象になり得ます。「うちは法人じゃないから関係ない」という整理にはなりません。

そして受注する側なら、こちらの方が切実です。振込手数料を差し引かれる側だからです。1件440円でも、月に何件も重なれば効いてきます。取適法で扱いが変わった以上、差し引かれ続けているなら、一度確認する価値があります。

口座については、個人事業主は屋号名義の口座(「屋号+個人名」で作るもの)を使うことが多いと思います。

個人名義の口座を事業に使い続けている場合は、分けた方がいいと考えています。理由は手数料ではなく、記帳と申告が楽になるからです。事業のお金と生活費が同じ口座を通っていると、明細を1件ずつ仕分ける作業が発生します。 記帳を自分でやっているなら、ここは毎月効く差です。

手数料の比べ方は、法人でも個人事業主でも同じです。上の3点(手数料・件数・無料回数の条件)を自分の取引で計算する。それだけです。

今の結論

私はこう整理しました。

  • 取適法への対応そのものは、差し引くのをやめるだけ。難しくない
  • ただしその分は自社の固定費になる。件数が多い会社ほど効く
  • メインバンクは動かさない。 融資の関係の方が重要
  • 支払用の口座だけ、手数料の安いところを検討する

まだ実際には作っていません。ただ、手数料を自社で持つと決めた以上、一度きちんと比べるべきだと考えています。

同じように取適法の対応をした会社は多いはずです。対応した後に、口座の見直しまでやった会社は、まだ少ないのではないかと思っています。

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会社の実務で、同じように自分で調べて整理したものです。


この記事について

本記事は、公開時点で中小企業庁および公正取引委員会が公表している情報と、筆者自身の対応・検討内容をもとに整理したものです。取適法の適用範囲や具体的な取扱いは、取引の内容や当事者の規模によって異なります。 自社が委託事業者に該当するかを含め、判断に迷う点は公式情報をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。手数料や口座の条件は各金融機関で異なり、変更されることもありますので、最新の内容は各行の公式サイトでご確認ください。

参考にした公式情報