うちは接待もゴルフもあります。 そして**「これは交際費になるか」の判断を、自分たちでしています。**
税理士事務所に丸投げしていません。領収書を出す前に、社内で分けています。
その前提で、こう思っていました。
「1人5,000円っていうのは、会議費の話じゃないの?」
違いました。 そして調べたら、その5,000円は2024年4月から1万円に変わっていました。
判断を自分たちでしているのに、基準が変わったことを知りませんでした。 調べた記録です。
そもそも「売上に関係するものは経費」ではないのか
先に、自分の思い込みから書きます。
私は「売上に関係する支出は経費になる」と思っていました。 事業のために使ったお金なら落ちる。それが原則だろう、と。
その認識自体は、間違っていません。 法人税でも、事業のための費用は原則として損金になります。
でも交際費は違いました。
交際費等は、事業に関係のある支出であっても、法人税では損金にならない部分があるという扱いになっています。国税庁の定義はこうです(No.5265)。
交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの
定義の中に「事業に関係のある者」と書いてあります。 つまり事業に関係があることは前提で、そのうえで損金に制限がかかっているわけです。
だから枠があります。 800万円という枠も、1人1万円という線も、「事業に関係があっても、そのままでは落ちない」から必要になっているものでした。
私は原則だけを覚えていて、例外を知らなかったということになります。
「1人1万円以下」は、会議費とは別の規定です
まず、混同していたところから。
どちらも「交際費にならない」という結果は同じです。でも根拠が違います。
| 中身 | 金額の基準 | |
|---|---|---|
| 会議費 | 会議に関連して通常要する茶菓・弁当などの費用 | 金額の基準はない(「通常要する」かどうか) |
| 1人1万円以下の飲食費 | 交際費等の範囲から除かれる飲食費 | 1人当たり10,000円以下という明確な線 |
会議費は「会議に関連しているか」で決まります。 金額の線はありません。会議の実体があるかどうかです。
1万円のほうは「飲食費」の規定です。 会議とは関係ありません。
私は、この2つを1つだと思っていました。
そもそも、1万円基準とは何なのか
ここを自分でも分かっていなかったので、整理します。
これは「交際費に数えなくていい」という線引きです。
順番に見ると、こうなっています。
- 交際費等は、そのままでは損金になりません(中小企業なら800万円までの枠がある)
- でも取引先との軽い食事まで全部交際費に数えると、枠がすぐ埋まります
- そこで**「1人当たり1万円以下の飲食なら、そもそも交際費等に含めない」**という除外がある
- 除外されれば、800万円の枠を使わずに全額落ちます
枠を守るための出口です。だから実務では「会議費で落とす」という言い方をされて、会議費と混ざります。 私が混同していたのも、たぶんそのせいです。
計算のしかた
国税庁のQ&Aには、算式が載っています。
飲食等のために要する費用として支出する金額 ÷ 飲食等に参加した者の数
テーブルチャージ料やサービス料などの付随費用も含めて割ります。
| 例 | 1人当たり | 扱い |
|---|---|---|
| 4人で40,000円 | 10,000円 | 除外できる。枠を使わずに全額経費 |
| 4人で44,000円 | 11,000円 | ⚠️ 44,000円が全額、交際費 |
⚠️ 超えたら「超過分だけ」ではありません
ここが一番間違えやすいところだと思いました。
1人当たりが1万円を超えた場合、超えた分だけが交際費になるのではありません。その費用の全額が交際費等になります。
1人11,000円なら、1,000円分ではなく、44,000円まるごとが枠を食います。
1人あたり10,001円と9,999円では、扱いがまったく違うということです。
2024年4月から、5,000円が1万円になりました
そしてここが、知らなかった部分です。
国税庁の説明では、こうなっています(No.5265)。
交際費等の範囲から除かれる一定の飲食費に係る金額基準について、1人当たり10,000円以下(改正前:5,000円以下)に引上げ
適用は令和6年(2024年)4月1日以後に支出する飲食費からです。あわせて、この制度の適用期限も3年延長されました(国税庁・令和6年度改正の概要)。
2倍になっています。 1人7,000円の食事なら、以前は交際費、今は交際費から外れる。同じ支出でも扱いが変わりました。
⚠️ 1万円以下でも、書類がないと認められません
ここが実務で一番大事なところだと思いました。
「1人1万円以下だから大丈夫」ではありません。 交際費等から除くには、次の事項を記載した書類の保存が必要です。
| 記載する事項 |
|---|
| 飲食等のあった年月日 |
| 飲食等に参加した得意先・仕入先など事業に関係のある者等の氏名または名称、およびその関係 |
| 飲食等に参加した者の数 |
| その費用の金額、飲食店等の名称および所在地 |
領収書を保管しているだけでは足りません。 誰と行ったのか、どういう関係の人か、何人だったのかを、自分で記録しておく必要があります。
⚠️ そして国税庁は、こういうことも明記しています。
一の飲食等の行為を分割して記載すること、相手方を偽って記載すること、参加者の人数を水増しして記載することは、事実の隠ぺいまたは仮装に当たります。
1万円に収めるために人数を増やして書く、というのは通りません。
⚠️ もうひとつ。役員や従業員、その親族だけの飲食(社内飲食費)は、この規定の対象外です。社内の飲み会は、いくら安くてもこの除外は使えません。
そして国税庁のQ&Aによれば、得意先が1人だけ参加していたとしても、実質的に社内の飲食と認められる場合には社内飲食費として扱われることがあります。形だけ社外の人を入れる、という運用は通りません。
交際費から除外できたら、何費にするのか
ここも引っかかりました。除外できたとして、帳簿には何と書くのか。
決まりはありません。 税法は勘定科目を指定していません。実務では会議費が使われることが多く、「飲食費」「接待飲食費」といった科目を作る会社もあります。どれでも構いません。
⚠️ ただし、因果が逆です
私はこう思っていました。
会議費にしたから、交際費じゃなくなる
逆でした。
要件を満たすから交際費等から除かれる。その結果、どの科目で処理してもよい
科目名を変えても、税法上の判定は変わりません。
それがはっきり分かるのが、別表十五(交際費等の損金算入に関する明細書)の書き方です。国税庁の説明には、こうあります(国税庁)。
当期に支出した交際費等の額について、その支出科目の異なるごとに別欄に記載します。
なお、当期に支出した交際費等の額には、損金経理による交際費等の金額のほか、固定資産や棚卸資産の取得価額又は繰延資産等の額に含まれた交際費等に該当する金額も含めて記載します。
**「支出科目の異なるごとに」**と書かれています。交際費等は複数の科目にまたがる前提なのです。そのうえ、固定資産の取得価額に紛れ込んだ交際費まで拾って集計しろと言っています。
科目名では逃げられません。
順番はこうです
| ① 判定 | その支出が交際費等に当たるかを、実質で判断する |
| ② 除外 | 1人1万円以下の飲食費で書類も揃っているなら、交際費等から除かれる |
| ③ 科目 | 除かれたものは、会議費でも何でも好きな科目でよい |
| ④ 集計 | 除かれなかったものは、どの科目に入れていても別表十五で交際費等として集計される |
先に判定、あとで科目でした。
⚠️ ゴルフには、この1万円が使えません
ここが、今回いちばん確認しておきたかった点です。
この規定は、条文上**「飲食費」**が対象です。ゴルフのプレー代は、飲食費ではありません。
- プレー代
- ゴルフ場利用税
- キャディフィー
どれも飲食ではないので、1万円の基準とは関係なく、交際費です。
⚠️ 問題は、ゴルフの前後の食事です。
「プレー代は交際費だが、食事は1人1万円以下だから外せる」と考えたくなります。ただ、ゴルフや観劇のような催事に伴う飲食は、その催事と一体のものとして扱われるという考え方があります。食事だけを切り出して1万円基準に当てはめられるとは限りません。
ここは私も断定できません。 ゴルフ接待をしているなら、税理士に「うちのゴルフの食事代はどう処理していますか」と聞くのが確実です。
私は聞いていませんでした。 判断を自分たちでしているのに、この論点があること自体を知りませんでした。
場面で考えると、はっきりします
制度の説明だけだと分かった気になるので、実際にありそうな場面で考えてみました。
まず「社内飲食費」とは何か
さっきから出てくる言葉なので、先に整理します。
条文では**「専ら当該法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出する飲食費」**です。自社の役員・従業員・その親族だけを相手にした飲食、ということです。
⚠️ ただし、社内の飲食が全部これになるわけではありません。
| 扱い | |
|---|---|
| 従業員等におおむね一律の慰安(運動会・演芸会・旅行、創立記念日などに社内で供与される通常の飲食) | 福利厚生費。そもそも交際費等ではない |
| 一部の役員・従業員だけの飲食 | 交際費等(社内飲食費)。1万円の除外も50%特例も使えない |
「おおむね一律」かどうかが分かれ目です。全員対象の忘年会と、役員だけの飲み会では扱いが違います。
場面1:社内の人間だけで飲みに行った
1人1万円以下でも、この除外は使えません。 社内飲食費だからです。1人3,000円でも同じです。
⚠️ さらに得意先が1人だけ参加していても、実質的に社内の飲食と認められる場合は社内飲食費として扱われることがあります。人数合わせで取引先を呼ぶ、という運用は通りません。
場面2:協同組合や業界団体の会合のあと、飲みに行った
ここは社内飲食費ではありません。 組合員企業の人は社外だからです。
1人1万円以下で、書類の要件を満たしていれば、除外できる余地があります。
⚠️ ただし、確認すべきことが残ります。
① その支出が「飲食費」に当たるか。 条文は「飲食その他これに類する行為」です。料金の中身や店の実態で判断されるので、飲食を伴えば何でも飲食費、というわけではありません。
② そもそも事業に関係があるか。 交際費等の定義は「事業に関係のある者に対する接待」です。組合員なら説明はつきやすいはずですが、関係が説明できなければ経費の話にすらなりません。
③ 1万円以下に収まるか。 現実的には、ここが一番の壁だと思います。
⚠️ 会議とその後は、別の行為です
見落としやすいのがここでした。
- 定例会そのものの費用(会場費、茶菓、弁当など)→ 会議費になりうる
- そのあとの飲食 → 会議費にはならない。「会議に関連して通常要する費用」ではないから
時間が続いているだけでは、ひとつの行為になりません。 「会議のあとだから会議費」は通らない、ということです。
中小企業は800万円まで。ただし選択制です
枠の話も整理しておきます。
資本金1億円以下の中小法人は、次のどちらかを選べます(国税庁)。
| 選べる方法 | 中身 |
|---|---|
| 定額控除 | 年800万円までの交際費等を全額損金にする |
| 飲食費の50% | 接待飲食費の50%相当額を損金にする |
いずれかを選択します。 交際費が800万円に届かない会社なら、定額控除を選べば全額落ちます。
なお資本金1億円超100億円以下の法人は飲食費の50%のみ、100億円超は全額損金不算入です。
⚠️ 個人事業主に、この800万円はありません
そして、このブログで何度も出てくる話です。法人と個人事業主で、まったく違います。
交際費等の損金不算入は、法人税の制度です。個人事業主には、この枠自体がありません。
国税庁の個人事業主向けの説明は、こうです。
相手方や支出の理由などからみて、事業を営む上で通常必要と認められる金額が必要経費になります
(国税庁)
金額の枠ではなく、「事業を営む上で通常必要か」で判断されます。
上限がない=自由、ではありません。 むしろ実質で見られるということです。法人なら800万円までは形式的に落ちますが、個人事業主は一件ずつ「事業に必要だったか」を問われることになります。
「交際費は800万円まで」という説明を読むときは、それが法人の話だと分かっておく必要があります。
そして冒頭に書いた「売上に関係するものは経費」という原則は、個人事業主のほうがそのまま当てはまります。 例外である交際費の枠がないからです。代わりに、一件ずつ実質で見られます。
判断を持っているなら、変更も追わないといけません
書いていて、これが結論だと思いました。
うちは、交際費の判断を自分たちでしています。 領収書を右から左に渡しているわけではありません。そこは丸投げしていない、という自負がありました。
でも、基準が2024年4月に変わったことを知りませんでした。
判断を持っているということは、その判断の前提が変わったときに気づく責任も持っているということでした。丸投げしていれば税理士が拾ってくれます。自分でやるなら、自分で追うしかありません。
このブログでは会計ソフトや記帳について「任せていることを把握していなかった」と書いてきました。今回は逆で、任せていないのに追えていなかったという話です。
次の決算前に、税理士に4つ聞きます。
- 1人1万円の基準に合わせて、社内の運用を変えていますか
- 保存する書類の記載は足りていますか
- ゴルフの食事代は、どう処理していますか
- 社内の飲食を、除外の対象に入れてしまっていませんか
4つ目は、この記事を書いていて一番怖くなったところです。「1万円以下だから大丈夫」と社内で判断していたら、社内飲食費まで除外してしまっている可能性があります。
⚠️ 聞く相手がいない場合
私には顧問税理士がいるので、次の決算前に聞きます。
ただ、個人事業主やひとり法人だと、そもそも顧問税理士がいないことも多いと思います。この記事を読んで「うちは大丈夫か」と思っても、聞く先がない。
交際費は金額の線だけで決まらず、実質で判断されます。 そして判定を間違えると、そのまま損金不算入になります。 自分だけで決めるには、範囲が広すぎる領域です。
税理士を紹介してもらって、一度相談するという手はあります。 無料で相談でき、地域や業種の希望も伝えられます。⚠️ 私は今の税理士を変えていないので使っていませんが、顧問がいない状態で交際費を社内判断しているなら、一度は専門家に当てたほうがいいと思います。
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この記事について
本記事は執筆時点(2026年8月)の制度内容と、筆者自身が調べた記録にもとづいて書いています。筆者は税理士ではありません。
交際費等の取扱いは、支出の内容・相手方・目的によって個別に判断されます。 特にゴルフや旅行などの催事に伴う飲食費の取扱いは、状況によって結論が変わり得ます。 金額基準・適用期限・損金算入の方法は改正されることがあります。具体的な処理については、国税庁の最新情報を確認のうえ、必ず顧問税理士にご確認ください。