役員報酬の明細の記事で、社長の年収は年の初めに固定されると書きました。
私もふるさと納税をやっています。 書いてから気づいたことがあります。年収が1月に決まっているなら、ふるさと納税の上限も1月に分かるはずです。従業員は残業や賞与で年収が動くので、上限が確定するのは12月です。社長は逆で、1月に計算できてしまう。
⚠️ もう1つ。会社には「企業版ふるさと納税」という別の制度があります。 個人のふるさと納税と名前は似ていますが、中身はまったく違いました。 両方を並べて整理します。
個人のふるさと納税は、2,000円を引いた残りが戻る仕組みです
総務省の説明で、控除の式はこう書かれています。
| 控除 | 計算式 |
|---|---|
| 所得税からの控除 | (ふるさと納税額 − 2,000円)× 所得税の税率 |
| 住民税からの控除(基本分) | (ふるさと納税額 − 2,000円)× 10% |
| 住民税からの控除(特例分) | (ふるさと納税額 − 2,000円)×(100% − 10% − 所得税の税率) |
3つを足すと、2,000円を超えた部分が全額戻る計算になります。ただし上限があって、
住民税からの控除の特例分は、この特例分が住民税所得割額の2割を超えない場合は、上記の計算式で決まります。
⚠️ **つまり上限を決めているのは「住民税所得割額の2割」**です。住民税所得割額は、その年の課税所得で決まります。 ここが社長に効いてきます。
🚩 社長は、1月に上限が分かります
住民税所得割額は課税所得で決まり、課税所得は年収と控除で決まります。
| 従業員 | 社長 | |
|---|---|---|
| 年収 | 残業・賞与で12月まで動く | ⚠️ 1月に固定(役員報酬は年1回しか変えられない) |
| 上限が分かる時期 | 年末近く | 1月 |
| やること | 年末に駆け込む | ⚠️ 年初に計算して、年間で配分できる |
「今年いくらまでか」を年末に慌てて計算する必要がない、というのが社長側の実務的な違いです。
⚠️ ただし、控除が増えると上限は下がります。 課税所得が減れば住民税所得割額も減るからです。社長が使いやすい控除ほど、ここに効きます。
- 小規模企業共済の掛金(全額所得控除)
- iDeCoの掛金(全額所得控除)
- 医療費控除、生命保険料控除、地震保険料控除
小規模企業共済とiDeCoを先に決めているなら、その掛金を引いた課税所得で上限を見る必要があります。年収だけで計算した上限で寄附すると、2,000円で済まない部分が出ます。
ワンストップ特例は、使えない社長がいます
**確定申告をしなくて済む「ワンストップ特例」**には、条件があります。総務省の説明では、
確定申告の不要な給与所得者等で、ふるさと納税先の自治体数が5団体以内である場合に限り
⚠️ 「確定申告の不要な」がポイントです。 社長でも、医療費控除を受ける・2か所から給与がある・副業の所得があるなど、確定申告をする年はワンストップ特例が使えません。 特例を申請していても、確定申告をした時点で申告のほうが優先され、寄附金控除を申告に入れ忘れると控除されません。
⚠️ うちは医療費控除があるので、毎年確定申告をしています。 だからワンストップ特例は最初から使っていません。 寄附先の自治体数を5団体以内に抑える必要もなく、受領書をまとめて申告に入れるだけです。逆に言うと、ワンストップ特例を出したあとで医療費控除のために確定申告をすると、特例は無効になるので、「今年は確定申告をするか」を先に決めてから、ワンストップにするか申告にするかを決める、が順番です。
2025年10月から、サイトのポイントは禁止されました
ふるさと納税のサイト選びは、これまで「どこが一番ポイントが付くか」で決まっていました。 それが変わっています。
寄附に伴いポイント等の付与を行う者を通じた募集を禁止すること。(募集適正基準の改正)【令和7年10月1日から適用】
⚠️ つまり2025年10月以降、どのサイトで寄附してもポイントは付きません。 サイト選びの基準が「ポイント」から、返礼品の探しやすさ・自治体数・寄附の履歴管理に変わりました。
うちのような経営者の場合、履歴管理は地味に大事です。確定申告に寄附の受領書が要るので、サイトに寄附履歴が残っていて、証明書をまとめて出せるかで、翌年3月の手間が変わります。
確定申告をする人は、サイトを1つに決めて寄附の履歴をそこにまとめるのが一番楽です。ポイントで選ぶ理由がなくなった今、大手で自治体数が多く、初めてでも手続きが分かりやすいところを1つ選べば十分だと思います。
「さとふる」でふるさと納税をする(大手のふるさと納税サイト)
会社には「企業版ふるさと納税」があります。中身は別物でした
個人のふるさと納税とは、目的も損得も違います。 内閣府の制度概要から並べます。
| 個人のふるさと納税 | 企業版ふるさと納税 | |
|---|---|---|
| 寄附する人 | 個人 | 会社(法人) |
| 最低額 | 決まりなし | ⚠️ 10万円以上 |
| 見返り | 返礼品がもらえる | 🚩 経済的な見返りは禁止 |
| 自己負担 | 2,000円(上限内なら) | ⚠️ 寄附額の約1割(最大約9割が税額控除+損金算入) |
| 寄附先 | 原則どこでも | ⚠️ 本社がある自治体は対象外。認定された地域再生計画の事業に限る |
| 期限 | — | 令和9年度まで延長(令和7年度税制改正) |
税の軽減の内訳は、内閣府の資料でこうなっています。
損金算入 約3割 / 税額控除 最大6割 / 企業負担 約1割
⚠️ ここで見るべきは「企業負担 約1割」と「見返り禁止」の2つです。個人は2,000円で返礼品が来るので、実質的に得をします。企業版は1割を会社が負担して、返礼品はない。 つまり**企業版は節税の道具ではなく、「1割の負担で10倍の額を地域に寄附できる制度」**です。
会社として応援したい地域や事業があるなら使う価値がある。 逆に、「会社の税金が減るから」だけで入ると、1割は純粋に出ていきます。 個人と同じ感覚で「お得」だと思うと、話が違います。
⚠️ 本社がある自治体には寄附できないのも、個人との大きな違いです。地元を応援したい会社ほど、この制度では地元に出せません。
私が確認すること
⚠️ うちの役員報酬額や寄附額は書きません。 ここは線を引きます。
確認する順番は決まりました。
- 今年の役員報酬から、小規模企業共済・iDeCo・その他の控除を引いた課税所得を出す(1月にできます)
- その課税所得で住民税所得割額を出し、2割を上限の目安にする(正確な上限は市区町村か税理士に確認)
- 確定申告に寄附金控除を入れる——うちは医療費控除で毎年申告するので、ワンストップ特例は使わない。寄附の受領書を確定申告まで保管する
- 会社として企業版を使うなら、「1割負担の寄附」として納得できる事業があるかを先に見る
⚠️ 1番が肝です。 年収だけで上限を計算した人と、控除を引いてから計算した人で、結果が変わります。社長は控除が多いので、この差が大きい。
まとめ
- 個人のふるさと納税は、2,000円を超えた部分が所得税・住民税から戻る。上限は「住民税所得割額の2割」で決まる
- 🚩 社長は役員報酬が1月に固定されるので、上限も1月に分かる。従業員は12月まで動く
- ⚠️ 小規模企業共済・iDeCo・医療費控除で課税所得が減ると、上限も下がる。年収だけで計算しない
- ⚠️ 確定申告をする年は、ワンストップ特例が使えない。うちは医療費控除で毎年申告するので、申告に寄附金控除を入れる
- 🚩 2025年10月から、サイトのポイント付与は禁止。サイトは返礼品と履歴管理で選ぶ
- ⚠️ 企業版ふるさと納税は別物。10万円以上・見返り禁止・約1割は会社負担・本社所在地は不可。節税ではなく「1割負担の寄附」
- 企業版は令和9年度まで延長された
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この記事について
本記事は筆者(製造業の中小企業経営者)が個人でふるさと納税を利用している経験と、執筆時点(2026年9月)に総務省ふるさと納税ポータルサイト、総務省の告示改正に関する報道資料(2024年6月28日)、内閣府地方創生推進事務局の企業版ふるさと納税ポータルサイトが公表している資料にもとづいて書いています。筆者は税理士ではありません。
⚠️ ふるさと納税の控除上限額は、収入・家族構成・他の控除の状況によって一人ひとり異なります。 本記事の「住民税所得割額の2割」は上限の目安を示すもので、正確な金額はお住まいの市区町村または税理士にご確認ください。企業版ふるさと納税の税額控除には各税目ごとの上限があり、会社の税額によって軽減率は変わります。
個別の判断については、必ず顧問税理士にご確認ください。 本記事は一般的な情報提供であり、個別の判断を示すものではありません。