スマホに届く「お荷物をお届けしましたが不在でした」「カードの利用を制限しました」。 押してしまってIDとパスワードを入れたら、口座やカードからお金が抜かれる。フィッシング詐欺です。

調べて分かったのは、「盗られたお金は戻ってくるのか」の答えが、銀行とカード会社で別々に決まっていて、どちらも「条件つき」だということでした。 そして条件の中身は、**「本人に過失がないこと」と「早く届け出ること」**です。

⚠️ つまり、詐欺の被害額そのものより、「補償の条件を満たしているか」のほうが、家計への影響を決めます。 そこを整理した記事です。

先に答えを書きます

盗られたのは 戻ってくるか 条件
個人の銀行口座(ネットバンキング) 原則、補償される ⚠️ 本人に過失がないこと。過失があれば減額、重大な過失なら対象外
クレジットカード 原則、補償される ⚠️ 届け出た日から遡って60日以内の利用(三井住友カードの例)。暗証番号を知られた取引や家族の利用は対象外
会社の銀行口座(法人) 🚩 個人と同じ「原則補償」ではない 銀行と会社の双方のセキュリティ対策を踏まえて個別に判断

「戻ってくる」の前提は、「自分は普通の注意をしていた」と説明できることです。順に書きます。

被害は年間100億円を超えています

まず、どのくらい起きているのか。 警察庁の「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」にこうあります。

令和7年におけるフィッシング報告件数は、245万4,297件であり、右肩上がりの増加が続いている。
また、令和7年におけるインターネットバンキングに係る不正送金事犯の発生件数は4,747件、被害総額は約103億9,700万円となっており、フィッシングがその手口の約9割を占める。

クレジットカードのほうはもっと大きいです。同じ資料に、

一般社団法人日本クレジット協会によれば、令和7年中のクレジットカードの不正利用被害額は約510億円(前年比約9%減)と、依然として厳しい情勢にある。

⚠️ そして手口は「二段階認証を突破する」段階に来ています。

フィッシングにおいては、令和元年頃からリアルタイム型フィッシングにより二段階認証を突破する手口が横行するなど、手口の巧妙化が見られる。

「SMSの認証コードがあるから大丈夫」は、もう通用しません。 偽サイトに入力した認証コードを、犯人がそのまま本物のサイトに入力するからです。

銀行の補償は「過失がなければ原則全額」です

個人の銀行口座から不正に送金された場合全国銀行協会の2008年の申し合わせが基準になっています。

盗難通帳やインターネット・バンキングによる預金等の不正な払戻しが発生した際に、銀行無過失の場合でもお客さまに過失がないときは原則補償する旨の申し合わせを行いました

🚩 「銀行に落ち度がなくても、預金者に過失がなければ補償する」、というのが個人口座の原則です。盗られたら泣き寝入り、ではありません。

⚠️ ただし「過失がないとき」が条件です。 全銀協の資料には「重大な過失または過失となりうる場合」の別紙があり、暗証番号を他人に教えた、パスワードをメモして一緒に保管していた、といった行為は減額や不補償の理由になります。 各銀行の規定で、「過失あり」なら一部減額、「重大な過失」なら補償なしという3段階が一般的です。

つまり銀行の補償は、「あなたが普通の注意をしていたか」を後から審査される仕組みです。

🚩 会社の口座は、個人と同じではありません

ここは経営者として、調べて一番気になったところです。

上の2008年の申し合わせは、預金者保護法の対象が個人であることを踏まえたもので、個人の口座の話です。法人の口座については、全銀協が2014年に別の考え方を出しています。

銀行に過失がない場合でも、個人のお客さまがご自身の責任によらず遭われた被害は、銀行は補償を行うこととした(平成20年2月19日)。しかしながら、最近は犯罪の手口が高度化・巧妙化し、法人のお客さまにも被害が拡大している。このため、インターネット・バンキングに関して、銀行ならびに法人のお客さまが一般的に必要とされるセキュリティ対策(以下略)

⚠️ 法人口座は「原則補償」ではなく、「会社側もセキュリティ対策をしていたか」を踏まえて個別に判断される、という整理です。会社のPCでネットバンキングを使うなら、対策をしていないこと自体が補償の減額理由になりうる。 個人の感覚で「銀行が何とかしてくれる」と思っていると、法人口座では通りません。

同じ人が、個人の口座と会社の口座を持っている。補償のルールは違う。 個人のカードと会社のカードを分けているのと同じで、口座も「個人」と「会社」で守り方を分けて考える必要がありました。

カードの補償は「60日以内の届け出」が条件です

クレジットカードの不正利用は、カード会社の会員規約で補償されます。 例として三井住友カードの案内では、

不正利用に対しては、弊社は、三井住友カード会員規約第14条(会員保障制度)に基づき、特別なケースを除き、不正利用のご申告をいただいた日から遡って60日前までの利用について損害を補償いたします。

⚠️ 「60日前まで」がポイントです。 3か月前の明細に知らない請求があっても、届け出が遅ければ対象外になりえます。毎月の明細を見ていない人ほど、この条件に引っかかります。

補償の対象外になるケースも、同じページに書かれています。

ご本人のご家族や同居人、代理人による不正利用については補償の対象にはなりません。
故意や過失により、第三者に暗証番号が知られたと弊社が認めた場合、暗証番号の入力を伴う利用については、補償の対象にはなりません。

⚠️ 暗証番号を推測されやすいもの(誕生日など)にしていて、暗証番号つきで使われた場合は、補償されないことがある、ということです。カード会社によって細部は違うので、自分のカードの規約で「何日」「何が対象外」かを一度見ておく価値があります。

補償の「土台」は、家族全員のスマホにあります

**銀行もカード会社も、補償の条件は「過失がない」「早く気づいて届け出る」**でした。逆に言うと、この2つを満たす状態を先に作っておけば、被害に遭っても戻ってくる可能性が高い。

そのために家庭でできることは、会社のPCの記事で書いたIPAの「6か条」と同じです。更新する・対策ソフトを入れる・パスワードを強くする・共有設定を見直す・バックアップ・手口を知る。 費用がかかるのは対策ソフトだけです。

⚠️ 家庭で会社と違うのは、「台数」と「人」です。 自分のPCだけ守っても、家族のスマホから家族の口座やカードが抜かれます。 子どものスマホ、親のスマホ、家族共用のタブレット。**「家族全員の端末に、詐欺サイトをブロックする機能が入っているか」**が家庭側の確認ポイントでした。

調べた範囲で、家族の複数台をまとめるなら、台数の多い製品が選びやすいと思いました。たとえばウイルスバスター トータルセキュリティ スタンダードは**6台・1年版 8,470円(税込、執筆時点の公式価格)**で、ネット詐欺対策・個人情報漏えい監視・Wi-Fiの盗み見防止がセットです。⚠️ 1台あたり月120円ほど。 銀行やカードの補償を受けられる状態を「保つ」費用として見ると、高い額ではないと思います。買うなら公式ストアで新規にが、条件が一番単純です。

ウイルスバスターの製品を公式で見る(家族6台をまとめて守るなら)

Windows標準のMicrosoft Defenderで最低線は満たせる、と会社のPCの記事で書きました。それは変わりません。**有料ソフトが足すのは「詐欺サイトのブロック」と「スマホを含む複数台の一括管理」**で、家庭ではその2つが効きます。

被害に気づいたら、順番はこうです

補償の条件が「早く届け出る」なので、順番を先に決めておきます。

  1. 銀行・カード会社に電話して止める——カードは届け出日から60日前までが補償の起点。1日でも早く
  2. 警察に届け出る——銀行の補償の要件に「警察への届出」が入っていることが多い
  3. パスワードを変える——同じパスワードを使い回している他のサービスも
  4. 端末を確認する——偽アプリが入っていないか。対策ソフトでスキャン

⚠️ 1番が最優先です。 「本当に詐欺か確かめてから」と調べているうちに、次の送金が動きます。止めてから調べる。

私が確認すること

⚠️ うちの口座・カード・家族の端末の中身は書きません。 確認する順番だけ書きます。

  1. 自分のカードの規約で、補償の日数と対象外の条件を読む——「60日」がカード会社によって違う
  2. カードと銀行の利用通知を、スマホに来る設定にする——気づく速さが補償の条件
  3. 家族全員の端末に、詐欺サイトをブロックする対策が入っているか——入っていない端末が1台あれば、そこが穴
  4. 会社の口座は「個人と同じ補償ではない」と認識して、会社のPC側の対策を先にする——会社のPCの記事の順番で

⚠️ 2番が、お金がかからなくて一番効きます。 利用通知が来ていれば、知らない請求に翌日気づけます。60日どころか1日で届け出できます。

まとめ

  • 令和7年のネットバンキング不正送金は約104億円、カード不正利用は約510億円。手口の9割がフィッシングで、二段階認証を突破する型が横行
  • 🚩 個人の銀行口座は、過失がなければ原則補償(全銀協2008年の申し合わせ)。過失があれば減額、重大な過失なら対象外
  • 🚩 法人口座は「原則補償」ではない(全銀協2014年)。会社側の対策状況も踏まえて個別判断
  • ⚠️ カードは「届け出日から遡って60日以内」が補償の起点(三井住友カードの例)。暗証番号を知られた取引・家族の利用は対象外
  • 補償の土台は「普通の注意をしていた」と説明できること。家族全員の端末に詐欺サイト対策を入れ、利用通知を受け取る
  • 被害に気づいたら、止める→警察→パスワード→端末の順

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この記事について

本記事は執筆時点(2026年9月)に警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」全国銀行協会「預金等の不正な払戻しへの対応」(2008年)同「法人向けインターネット・バンキングにおける預金等の不正な払戻しに関する補償の考え方」(2014年)三井住友カードの会員保障制度の案内、各製品の公式サイトにもとづいて書いています。筆者はセキュリティや金融の専門家ではありません。本記事は調べた内容の整理であり、特定の製品の性能を筆者が検証したものではありません。

⚠️ 補償の条件・日数・対象外の範囲は、銀行・カード会社ごとの規定によって異なります。 本記事の「60日」は三井住友カードの公開情報にもとづく一例で、お使いのカード・銀行の規定を必ずご確認ください。製品の価格・台数・機能は改定されます。

被害に遭った場合の手続きや補償の可否については、必ず取引先の銀行・カード会社・警察にご確認ください。 本記事は一般的な情報提供であり、個別の判断を示すものではありません。