経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)に、うちは入っていません。

「掛金が全額損金になるから節税になる」と何度も勧められました。制度としては筋の通った良いものだと思っています。それでも今は入らない、という結論になりました。

理由は単純で、うちの場合は今のところ節税の効果がほとんど出ないからです。この記事は、その判断に至るまでに考えたことの記録です。

「全額損金だから得」という説明だけで判断すると、たぶん間違えます。

制度そのものは、よくできている

まず前提として、制度の中身は悪くありません。

  • 掛金は月5,000円から20万円まで自由に決められ、増額・減額もできる
  • 掛金は損金(法人)または必要経費(個人事業主)に算入できる
  • 40か月以上納めれば、解約手当金として掛金が全額戻る(12か月以上で8割以上、12か月未満は掛け捨て)
  • 取引先が倒産したとき、**掛金総額の10倍(最高8,000万円)**と回収困難になった売掛金債権等の額のいずれか少ない額の範囲で借入れができる

**本来の目的は「取引先が倒産したときの資金調達」**です。節税は付随的な効果にすぎません。ここを取り違えると判断を誤ります。

「全額損金」は「税金が減る」ではない

ここが一番大事な点です。

損金に算入できるというのは、「課税される所得を減らせる」という意味です。所得が減るから、そこにかかる税金が減る。それだけです。

ということは、もともと課税される所得が出ていなければ、減らすものがありません。

掛金を払っても税金は1円も減りません。ただ現金が出ていくだけです。

うちの場合:課税所得がほとんど出ていない

うちは今、課税所得がほとんど出ていない状態です。過去の分の繰越があるためです。

法人税には欠損金の繰越控除という仕組みがあります。青色申告をしていれば、ある事業年度に生じた欠損金を10年間繰り越して、その後の所得から差し引けます(平成30年4月1日前に開始した事業年度に生じたものは9年)。

そして中小法人等の場合、控除の限度額に制限がありません。 その事業年度の所得金額を限度に、全額を控除できます。

つまり、繰り越しがある間は課税所得をゼロにできるということです。

この状態で掛金を払っても、節税効果はゼロです。 「全額損金」という売り文句が、うちには効きません。

そして解約手当金は「収入」になる

もう一つ、見落としやすい点があります。

解約手当金は、受け取った年の収入(益金)になります。 掛金を払ったときに損金にして、受け取ったときに益金にする。差し引きすると、税金が消えたわけではなく、払うタイミングが後ろにずれただけです。

つまりこの制度は、**節税ではなく「課税の先送り」**です。

ここを踏まえると、うちの状況はこうなります。

  • :払っても税金は減らない(課税所得がないので)
  • 将来:解約したときに収入として課税される

メリットを受けられない時期に払って、税金だけ将来に発生する。 順序が逆です。だから今は入らない、という結論になりました。

逆に言えば、黒字が定着して税金を払う状態になってからが、本来の出番だと考えています。

2024年10月の改正で、出口の設計が重要になった

もう一つ、知らない人が多いと思われる改正があります。

令和6年(2024年)10月1日以後に共済契約を解除した場合、解除の日から2年を経過する日までの間に支払う掛金は、損金または必要経費に算入できません。

以前は「積立限度に達したら解約して、また入り直す」という調整ができました。それが封じられました。 国としては、制度の本来の目的から外れた使い方を抑える改正です。

これが意味するのは、入る前に出口まで考えておく必要があるということです。

  • いつ解約するのか
  • 解約した年に、その収入を吸収できる損失や支出があるか
  • 再加入を前提にした運用は、もうできない

「とりあえず入っておく」が通用しにくくなりました。 私が慎重になっている理由の一つでもあります。

それでも入るべき場合がある

ここまで否定的に書いてきましたが、入るべき状況もはっきりしています。

節税ではなく、本来の目的が必要な場合です。

  • 売掛金の回収不能リスクが現実的にある(取引先が少数に偏っている、与信の把握が難しい)
  • 取引先が倒産したときに、すぐ動かせる資金の当てがない

この目的で入るなら、課税所得が出ているかどうかは関係ありません。 保険として持つ話なので、節税効果がゼロでも意味があります。

税金の話と、備えの話は別です。私が「今は入らない」と判断したのは、あくまで節税目的では意味がないという理由であって、制度そのものを否定しているわけではありません。

まとめ:判断の順番

私はこう整理しました。

  1. まず「何のために入るのか」を決める。 節税か、倒産時の備えか
  2. 節税目的なら、自分の会社に課税所得が出ているかを確認する。 出ていなければ効果はない
  3. 備えが目的なら、課税所得の有無は無関係。 入る価値がある
  4. 入るなら、出口(いつ解約するか)まで先に考える。 2024年10月の改正で、解約後2年間は再加入しても損金にできない

うちは1で「節税」寄り、2で「効果なし」となったので、今は入らず、黒字が定着してから改めて検討することにしました。

「全額損金だから入るべき」という勧め方をよく見かけますが、それが効くかどうかは会社の状況によります。 自分の会社の決算をひととおり見てから決めるべき話でした。

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会社の実務で、同じように自分で調べて整理したものです。


この記事について

本記事は、公開時点で中小機構および国税庁が公表している情報と、筆者自身の検討経過をもとに整理したものです。税務の取扱いは個々の会社の状況によって結論が変わります。 制度や税制は改正されることもありますので、実際の判断にあたっては必ず公式情報をご確認いただき、顧問税理士にご相談ください。本記事は特定の判断を推奨するものではありません。

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