月110ドル。 これが今、うちの社内ツールを作って動かしている費用の全部です。
私はエンジニアではありません。製造業の中小企業を経営していて、経理も自分でやっています。プログラムを書いた経験もありませんでした。
それでもこの1年ほどで、社内で使う業務ツールをいくつか自分で作りました。今も日常的に使っています。
外注の見積もりは取っていません。高いのが分かっていたからです。 そして、これが実は一番大きな話でした。
何を作ったか
具体的には、こういうものです。
- 材料の切り出しを計算するツール(決まった長さの材料から、必要な寸法を無駄なく取る組み合わせを出す)
- 板材の割り付けを計算するツール
- 現場写真に工事名や日付を焼き込むアプリ(撮影した写真をそのまま提出できる形にする)
- 熱中症の対応手順と記録のアプリ
- 法定の作業記録をつけるアプリ(保存年数が長いもの)
- 見積書の作成を楽にした表計算
どれも**「うちの業務に合わせた形」でないと意味がないもの**ばかりです。市販のソフトを買っても、たいてい少しずつ合いません。
そして今読んでいただいているこのサイトも、同じやり方で作りました。
月110ドルの中身
内訳らしい内訳はありません。 110ドルは、Claude というAIの月額プラン(Max)そのものです。日本円にすると月1万数千円です。
意外に思われるかもしれませんが、作ったものを公開して動かす部分には、ほとんどお金がかかっていません。 使っているサービスの無料の範囲で収まっています。別途かかっているのは、このサイトのドメイン代が年1,600円ほど、それだけです。
そしてもう1つ。これは「1本あたり」ではありません。 この金額の中で、上に挙げたもの全部を作り、動かしています。1本増やしても、費用は変わりません。
市販のソフトは1つ契約すると月に数千円かかります。それが何本あっても金額が変わらないというのは、感覚がかなり違います。
なお、私はこのサービスから紹介料を受け取っていません。 この記事にはアフィリエイトリンクを置いていないので、リンクを踏んでいただいても私には何も入りません。実際に払っている金額をそのまま書いています。(金額はいずれも執筆時点のもので、プランや為替で変わります)
感覚としては、優秀なエンジニアを1人雇ったのに近い
金額の話をしましたが、「月110ドル」だけでは高いのか安いのか伝わらないと思います。
私の実感を正直に書くと、東大を出たくらい頭のいいエンジニアを、1人雇った感覚に近いです。しかも24時間動きます。待たせても文句を言われませんし、深夜でも夜中でも構いません。
エンジニアを1人雇うことを考えれば、金額の桁がまるで違います。
そもそも地方の中小企業の場合、給料を出せるかという以前に、そういう人はまず来てくれません。 うちにもエンジニアはいませんし、これから採用できる見込みもありません。その席が、月110ドルで埋まっているという感覚です。
ただし、ここは正直に書いておきます。
勝手に判断はしてくれません。 何を作るか、どこまでやるかを決めるのは自分です。指示があいまいなら、あいまいなものが返ってきます。
そして平気で間違えます。 それらしい顔をして違うことを言ってくることもあるので、確認するのはこちらの仕事です。会社の数字や法令が絡む部分は、鵜呑みにせず必ず裏を取っています。
つまり **「優秀なエンジニアが勝手にやってくれる」のではなく、「優秀なエンジニアに、素人の自分が指示を出している」**というのが実態です。指示を出す側の仕事は、むしろ増えます。
それでも、やろうとして諦めていたことが、実際に形になるようになりました。
一番大きかったのは「失敗できるようになった」こと
これが本題です。
外注は、失敗できません。
見積もりを取って、数百万円と言われて、それを払って作ってもらう。出来上がったものが現場で使われなかったら、その金額はまるごと損です。
だから慎重になります。仕様を細かく詰めて、会議をして、それでも不安が残る。そして結局、「じゃあ今回はやめておこう」となります。
私も長いことそうでした。見積もりすら取っていません。 高いと分かっていたので、検討の入口にも立たなかったからです。
自分で作るようになって、そこが変わりました。
作ってみて、使わなければそれだけです。
追加の費用はかかりません。月110ドルの中で作っているので、1本増やしても減らしても金額は同じです。「とりあえず作ってみる」ができるようになりました。
これは節約の話ではなく、判断の仕方が変わったという話です。
- 以前 … 効果が確実でないものは、高いので試せない
- 今 … 効果が分からないから、試して確かめる
やってみて現場で使われなければ、それは「使われないと分かった」という結果です。それだけのことです。
作ったあとに、すぐ直せる
これも大きい点でした。
業務ツールは、使い始めてから「ここが面倒だ」と気づきます。 作る前には分からないことばかりです。
- 押す手順が1つ多い
- 現場で使う言葉と表示が違う
- 実際の作業の順番と、画面の並びが合っていない
どれも小さいことですが、毎日使うと効いてきます。
外注だと、ここが止まります。「ここを直したい」は仕様変更になり、見積もりが出て、日程を調整して、という話になります。金額と手間を考えて、「まあ、このまま使うか」となる。 そして少しずつ使われなくなります。
自作なら、気づいたその日に直せます。 追加の費用もかかりません。
最初に「市販のソフトは少しずつ合わない」と書きましたが、自作の本当の利点は、最初から完璧に作れることではなく、合わなかったところを後から直し続けられることでした。
私が作ったものが今も使われているのは、よく出来ているからではありません。使いながら直してきたからです。
(もっとも、いつでも直せるのでいつまでも完成しないという面もあります。ここは正直に書いておきます)
非エンジニアでも進められる理由
「プログラムを書いたことがないのに、なぜできるのか」と聞かれそうなので書いておきます。
詰まったら、その場でAIに聞けるからです。
エラーが出ても、意味が分からなくても、そのまま貼って聞けば返ってきます。分からないところで止まらないというのが、独学との決定的な違いでした。
正直に言うと、私は今も中で何が起きているかを完全には理解していません。 それでも動くものが出来て、業務で使えています。
ホームページの更新も楽になった
副次的な効果もありました。
会社のホームページの手直しも、以前は業者に頼むか、諦めるかでした。今は自分でできます。
「ここの文章を直したい」「この部分の見た目を変えたい」という程度のことに、いちいち費用と時間をかけなくてよくなりました。
小さいことのようですが、「頼むほどではないから放置していたこと」が片付くのは、地味に効きます。
パソコンの不具合も、自分で調べられるようになった
これは作る話ではありませんが、実際に一番助かっている使い方かもしれません。
「業者を呼ぶほどでもない不具合」が、自分で片付くようになりました。
たとえば、こういうことです。
- 特定のソフトが起動時に固まる … 原因を特定できて、更新で解決した
- 事務所のネットワークが遅い … 原因が分かり、その場での直し方も分かった
- パソコンが特定の場面で落ちる … 設定を変えたら頻度が激減した
いずれも、業者を呼ぶには小さすぎるが、毎日地味に困る類のものです。
小さな会社には、情報システムの担当者がいません。困ったら業者を呼ぶことになりますが、来てもらうだけで費用がかかります。 だからこの規模の不具合は、たいてい「我慢する」で終わっていました。
これも構造はツールの自作とまったく同じでした。
- 頼むには小さすぎる
- でも放置すると毎日効いてくる
- だから誰も手をつけない
エラーの文章をそのまま貼って聞けば、原因の見当がつきます。 分からない用語もその場で聞けるので、調べ物の途中で止まりません。
そして重要なのは、これも月110ドルの中に含まれているということです。追加の費用はかかりません。
ただし、できないこともあります。 物理的に壊れているものは直せませんし、データが消える可能性のある操作は、私も慎重にしています。判断がつかないときは、無理せず業者に頼むべきだと思っています。
向いていること、向いていないこと
正直に書いておきます。
向いていると感じたもの
- 自社の業務に合わせた形が必要なもの(市販品では少しずつ合わない)
- なくても仕事は回るが、あると楽になるもの
- 失敗しても損が小さいもの
私が作ったものは、全部これに当てはまります。
手を出していないもの
- 会計や給与計算のような基幹の業務
こちらは市販のソフトを使っています。法令の改正に追従する必要があり、間違えたときの影響も大きいからです。ここを自作するのは、うちの規模では合わないと考えています。
正直に書いておくべきこと
いい面ばかりではありません。
保守は自分に返ってきます。 外注なら「動かなくなったので直してください」と言えますが、自作したものは自分で直すことになります。今のところ困っていませんが、これは引き受けているリスクです。
また、自分にしか分からない状態になりやすいという問題もあります。私が使えなくなったとき、社内の誰かが引き継げるかというと、そこは正直まだ弱いところです。
これから試す人へ
伝えたいことは1つです。
「高いだろうから」で検討をやめているものが、たぶんいくつかあります。
私がまさにそうでした。見積もりを取ることすらしていませんでした。でも今は、月110ドルの中で試せます。
まずは、なくても困らないが、あれば楽になるものから作ってみるのがいいと思います。使われなければ、それだけの話です。
その「それだけの話」にできることが、一番大きな変化でした。
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この記事について
本記事は、筆者自身の環境と使い方をもとに書いています。費用は契約するサービスや使い方によって変わります。 また、業務システムの内製には保守や引き継ぎの責任が伴います。法令対応が必要な業務や、間違えたときの影響が大きい業務については、市販のソフトや専門家の利用をご検討ください。