前回、役員社宅について調べました。その流れで気になったのが、**「そもそも自分は住宅ローンを組めるのか」**ということです。
会社員だった頃の感覚だと、住宅ローンは「年収と勤続年数で決まるもの」でした。ところが調べてみると、役員になった時点で、審査の見られ方がまったく変わることが分かりました。
そして一番の発見は、節税と住宅ローンは相反するということでした。この2つを同時に最適化することはできません。
まだ借りるかどうかも決めていませんが、知らずに動くと数年単位で損をする話だったので、記録として残します。
会社員と何が違うのか:会社の決算も見られる
会社員が住宅ローンを申し込むとき、見られるのは主に個人の情報です。源泉徴収票、勤続年数、他の借入。基本的にはその人自身が審査対象になります。
役員になると、ここに会社が加わります。
一般に、民間の金融機関では会社の決算書を求められるとされています。何期分必要かは金融機関によって異なり、3期分が一般的と言われますが、2期分で済むところもあるようです。
つまり、こういうことです。
自分の役員報酬が高くても、会社の業績が悪ければ審査は厳しくなる。
会社員なら勤め先の業績が個人の審査に直接響くことはまずありません。役員は会社と一蓮托生として見られます。ここが最も大きな違いでした。
「自分の年収が高い」だけでは足りない
もう少し踏み込むと、役員の場合はこの2つを両方満たす必要があります。
- 個人の年収(役員報酬)が十分にあること
- 会社の業績が安定していること
どちらか一方では足りません。
そして、ここで経営者特有の問題が出てきます。
節税と住宅ローンは、相反する
これが調べていて一番はっきりした点です。
経営者は普通、税金と社会保険料を抑えるために役員報酬を必要以上に上げません。 会社に利益を残すか、共済などで繰り延べるか、いずれにせよ個人の年収を高くしすぎない方向で組み立てます。それが合理的だからです。
ところが、住宅ローンの審査で見られるのは、その抑えた役員報酬の額です。
- 節税のために役員報酬を下げる → 住宅ローンの審査では年収が低い人になる
- 審査を通すために役員報酬を上げる → 税金と社会保険料が増える
同じ人の同じ会社なのに、目的によって最適な役員報酬がまったく逆になります。
前回書いた役員社宅も、本質は「役員報酬を下げて、その分を会社が負担する」仕組みでした。役員社宅と住宅ローンは、報酬をめぐって真逆の方向を向いていることになります。
だから「いつ借りるか」を逆算する必要がある
ここから導かれる結論は明確でした。
住宅ローンを組むつもりがあるなら、その数年前から役員報酬を上げておく必要があります。
役員報酬は原則として事業年度の途中で自由に変えられません(変えると損金にできない部分が出ます)。思い立った月に上げられるものではないので、借りる時期から逆算して決める必要があります。
- 借りる予定の数年前から役員報酬を上げる
- その間、税金と社会保険料は多めに払うことになる
- その負担は、住宅ローンを通すためのコストと考える
「家を買いたいから来月から報酬を上げよう」では間に合いません。知らないと、審査の段階で初めて気づくことになります。
フラット35という選択肢
調べていて、もう一つ分かったことがあります。
フラット35は、民間の金融機関とは審査の見方が違うとされています。 民間銀行のように法人の決算書や経営状況まで踏み込んで見ることは、基本的にないと言われています。
住宅金融支援機構が公表している利用条件は次のとおりです。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 申込時の年齢 | 満70歳未満(親子リレー返済なら70歳以上も可) |
| 借入額 | 100万円以上1億2,000万円以下(1万円単位、建設費または購入価額以内) |
| 借入期間 | 15年以上。「80歳-申込時の年齢」と「35年」の短い方が上限 |
| 床面積 | 一戸建て等 50㎡以上 / マンション等 30㎡以上 |
会社の業績に不安がある経営者にとっては、選択肢として知っておく価値があると感じました。ただし審査の実際は申込先によって異なるので、必ず事前に確認が必要です。
借りられる額は「総返済負担率」で決まる
フラット35で明確に示されているのが、総返済負担率の基準です。
年収に占める、すべての借入の年間合計返済額の割合が、次の範囲に収まる必要があります。
| 年収 | 総返済負担率 |
|---|---|
| 400万円未満 | 30%以下 |
| 400万円以上 | 35%以下 |
ここで注意したいのが「すべての借入」という点です。住宅ローンだけではありません。車のローン、カードローン、その他の借入もすべて合算されます。
経営者の場合、会社の借入に個人保証を付けているケースがあります。これがどう扱われるかは金融機関の判断になるので、心当たりがあるなら事前に確認しておくべきだと思いました。
調べてみて思ったこと
会社員だった頃の感覚のままでいると、確実に外すと感じました。
**役員の住宅ローンは、「個人の話」ではなく「会社と個人をまとめた話」**です。そして役員報酬という一つの数字が、税金・社会保険料・住宅ローンの審査すべてに効いてきます。
私自身は前回書いたとおり、当面は持ち家を見送る方向で考えています。会社の資金繰りと個人の返済を同時に抱えたくないという理由は変わりません。
ただ、「借りられないから借りない」と「借りられるが借りない」はまったく違います。 選べる状態にしておくために、役員報酬をどう置くかは意識しておこうと思いました。
これから検討する人へ
順番としては、こうなると思います。
- 借りる可能性があるなら、何年後かをざっくり決める
- そこから逆算して役員報酬を組み立てる(数年前から必要)
- 会社の決算を整える(業績と借入の状態が見られる)
- 民間銀行とフラット35の両方を検討する(見られ方が違う)
- 他の借入と、会社の借入への個人保証を洗い出す
そして役員報酬の設計は税理士と相談すべきです。住宅ローンだけを見て報酬を決めると、税金と社会保険料で足元をすくわれます。両方を見て決める必要があります。
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この記事について
本記事は、公開時点で住宅金融支援機構が公表している情報と、筆者が自分の判断のために調べた内容を整理したものです。民間金融機関の審査基準は各社で異なり、公表されていない部分も多くあります。 記載した「一般的とされる取扱い」は、実際の審査結果を保証するものではありません。制度や条件は変更されることがありますので、実際のお申し込みにあたっては必ず各金融機関にご確認ください。また役員報酬の設計については、税務上の影響が大きいため顧問税理士にご相談ください。
参考にした公式情報